第4回コラムでは、数多くのグラフを掲載して電機メーカー各社の問題提起を行ない、シャープ型経営の“誤算”について詳述した。今回は、前回と同じくシャープ型、ソニー型、東芝型の検証をそれぞれ行ないながら、「ソニー型経営の特徴」を分析してみよう。
なお、筆者はシャープだけでなく、ソニーや東芝の社内事情を全く知らない(このうち某社の工場見学には行ったことがあるが)。よって、これから述べる内容は筆者の勝手な解釈であり、「こうなのだろう」という推測を含んでいる点をご承知いただきたい。
〔図表1〕電機各社の買入債務回転期間 |
それでは、今回は切り口を変えて、シャープ、ソニー、東芝の「買入債務の回転期間」(〔図表1〕)を分析することから始めよう。
買入債務とは、支払手形と買掛金を合わせたものである。買入債務回転期間は、「仕入れに伴う債務を支払うのに何日分の売上高が必要か」を表す指標であり、基本的には高いほど支払いに余裕が生まれるため、財務体質は健全と評価される。
一般に売上高をベースに算出されるようだが、〔図表1〕はそれと異なり、筆者オリジナルの調整を加えてある。おそらく、〔図表1〕のほうが現場の感覚に合っているはずだ。
経営分析は、主に経営幹部によって用いられる。彼らの多くは現場から離れて久しいため、経営分析のデータは何よりも“現場の感覚”に合致した指標を模索する必要がある。
買入債務回転期間から紐解く
シャープの強みとは?
〔図表1〕を見てまず目を引くのが、「シャープの回転期間の長さが際だっていること」である。ここでは3社を比較しているだけだが、他の電機メーカーと比較しても、シャープの回転期間は総じて長い。シャープは、支払い管理が特に厳しいのだろうか?