批判的な意見をクリエイティブに向かわせる方法

「ニッチなものづくりに大企業がどうやって向き合えばいいのか」という問いがさまざまなところで挙がっています。個人の思いを大企業的な文脈にどう接続すればいいでしょう。

「3Dプリントしたモックアップ」

根津 大企業にはもともと能力の高い人がたくさん集まっているので、うまくチームを組めば、むしろ前向きな議論をしやすいと思います。しかし、ただ「いいアイデアを出して」と言っても何も出てきません。僕はまず、駄作でもいいからスケッチを描いて、ひとつめの石としてポンと投げ、「こんなんどうですか」と問いかけるようにしています。「そりゃないわ」といわれたらこっちのもの。「どう“ない”のか」という意見をどんどん引き出していけますから。アイデアは相互のやり取りから生まれていくものです。最初の石を自分が投げれば、次は向こうから石が返ってくる。批判的な意見も、深く掘ればアイデアにつながっていく。コミュニケーションこそクリエイティブの原点です。僕が「クリエイティブコミュニケータ」を名乗っているのもそのためです。

CGや3Dプリントはプロトタイピングという局面で語られることが多いですが、根津さんのお話をうかがうと、モノが形になる前の「やりたいことを共有するためのツール」としても使えそうですね。

根津 スケッチでもその目的は達成されますが、CGや3Dプリントを使うと「わーっ」とチームのテンションが上がります。これがいいものを作るための入口になる。たとえば僕が中村さんのところにバイクの3Dプリントを持っていけば「ここはこうした方がいい」というコミュニケーションが得られます。3Dプリンターがあるだけで全てが変わったりはしませんが、コミュニケーションが活性化するのは間違いありません。

コミュニケーションを引き出すためのツールという意味では「言葉」に近いと。

根津 そうです。言葉も、スケッチも、CGも、3Dプリントも全部コミュニケーションのためのツールです。自分の思いをどれだけインパクトを持って正確にぶつけられるかが大事。僕は3Dデータを「夢と現実の架け橋」だと思っているんです。現実に向き合いながら夢を形にするサイクルを個人レベルでひとつ回せるわけですよね。スケッチだけだと「なんとなくできそうだ」というレベル止まりですが、3Dデータなら確度を持って「こうすればできる」と言える。すると人の心は動きやすい。3Dプリンターが低価格化している今なら、勢い余って出力してしまってもいい。「こんな構造です!」と立体を見せれば、さらに「おおっ!」となるわけじゃないですか。