本来、企業年金は私的な制度であるが、公的年金と並んで、老後の生活保障に重要な役割を果たしている。とくに、公的年金給付の一部を代行することが認められているため、制度的にも密接に関連している。以下では、現在の企業年金がいかなる問題を抱えるかを分析する。

企業年金の仕組み

 企業年金の仕組みはやや複雑である。そこでまず実体がどうなっているかの概観から始めよう。

 日本の退職後生活の手当は、従来は退職一時金の支払いによってなされてきた。それが徐々に年金化されてきた。

「厚生年金基金」は、1966年に設立された制度で、企業年金の中核をなす。公的な年金制度である厚生年金に上乗せして支給する企業年金制度としてスタートした。

 しかし、運用環境の悪化などから制度が見直され、2001年に確定給付企業年金制度と確定拠出年金制度の創設が決まった。確定給付企業年金は2002年から始まった。2014年9月1日現在で1万4124件ある。

 確定拠出年金は、「401k」とも呼ばれる。それまでの企業年金が給付額を企業などが保証する給付建てであるのに対し、確定拠出年金では、拠出された掛金が個人ごとに明確に区分され、掛金とその運用収益との合計額をもとに給付額が決定される。自分で運用商品を選ぶ。14年6月での加入者数は499万人だ(企業年金連合会の資料による)。

 これらのほかに「税制適格退職年金」があったが、2012年3月末に廃止された。

厚生年金基金の実態

 以下では、厚生年金基金制度を中心に述べる。

 これは、つぎの2つの部分からなる。

(1)国の老齢厚生年金の一部を国に代わって支給する「代行給付」

(2)企業の実情に応じて行なう独自の上乗せ給付(プラスアルファ給付)

 その状況は、次ページの図表1に示すとおりだ。

 厚生年金基金数は、2003年度末の1357から減少を続け、12年度末には560基金となった(図には示していないが、ピーク時には1800以上あった)。基金の加入員数は415万人、事業所数は 10.5万だ。

 年金受給者は267.5万人だ。2012年度における厚生年金の受給者数は3154万人なので、その8.5%ということになる。