報道に懐疑の目を持つ中国人
日中で異なるメディアへの信頼度

 国交正常化の後、特に1982年に第一次教科書問題が発生してからは、日中両国間で歴史問題をめぐる対立が断続的に発生した。だが、1990年代に入るまでは、政界、財界、官僚同士の太いパイプが日中間に存在していたため、問題発生のたびに、解決に向けたメカニズムが迅速に動き出し、事態の収束も速かった。

 もちろん、その原因として、パイプ役の存在だけではなく、中国の経済発展には日本の支援および投資が不可欠であったことや、敗戦国であることを踏まえての低姿勢外交や積極的な対中協力も挙げられる。さらに、1980年代までは日中両国間に良好な世論・輿論環境があったことも重要な要因であろう。

 しかし、現在では、民意の変化に伴い、日中両国民の相互イメージの悪化が著しい。ただし、特定非営利活動法人「言論NPO」が2005年以降実施している世論調査によると、2005年以降の日中両国の相互イメージの変化は若干異なる様相が見られる。

 2005年から2014年までの日本国民の対中マイナスイメージは上昇基調で推移しており、今年(2014年)の中国に対するマイナスイメージは、93.0%まで上昇した。他方、中国の対日イメージの場合、悪化と改善を繰り返しつつ、トレンドとしては悪化している。民主党政権期、特に尖閣諸島の国有化以降、中国の対日イメージは大幅に悪化したものの、今年の調査では、若干改善している。

 なぜ、若干ながらも日中両国間の相互イメージの変化に、異なる傾向が生じたのか。その原因として、以下の2つが考えられる。

1、メディア・リテラシーに対する考え方の相違

 戦後の日本が民主主義国家として再建していく過程で、マスコミは目覚ましい発展を遂げ、多様な世論空間が構築されてきた。故に、日本の国民はテレビ、新聞、雑誌といったマスコミ報道に対する信頼度が高く、マスコミの報道の影響を受けやすいと言われる。

 そのため、1980年代の日中蜜月期が過ぎ、1989年の天安門事件、1998年の江沢民訪日、2005年および2012年に中国各地で発生した反日デモを経て、中国の政府およびマスメディアの歴史認識問題における強硬姿勢は、日本のマスコミと国民感情を激しく刺激することになった。2000年代以降の日本のマスコミにおける中国報道で、マイナス面の指摘が著しく増加した。

 無論、中国に関する事実報道は新聞などで常に伝えられているが、目立たない紙面の小さいスペースで扱われることが多くなった。逆にマイナス報道は一面トップで報道され、目につきやすい。テレビに関しては、地上波の中国報道はマイナス面を強調する傾向が一段と強まっている。

 そういった日本の対中世論を形成するマスコミ論調が厳しくなるなか、日本人の対中イメージに改善が見られないのは、当然の結果と言えよう。