第一次教科書問題や1985年の中曽根総理の靖国参拝は、その象徴的な事例である。これらの選択は当然のことながら、戦後40年間の反省を踏まえたものであり、日本国内で一定の支持を得ていた。

 しかし、中国人から見れば、戦後初めて本当の日本を見ようとした矢先に現れたのは、戦争という歴史問題に終止符を打ち、中国をはじめとするアジア諸国との戦争に対する解釈を変更しようとする動きであった。台湾や韓国の歴史問題に対する追及がそれほど厳しくないのに比べて、中国が極端に厳しい態度を示すのは、戦後40年間の日本の歩みに対する評価が欠落しているからである。

 また、2000年代以降、中国人の反日デモの際の過激な行動は、日本との戦争問題の決着をめぐる中国政府の対応への不満の表れでもあろう。

 新聞やテレビなどのメディアは政府にコントロールされており、国民の意見をそのまま反映させるのは、きわめて難しい。2000年代に入り、中国でのインターネットの普及に伴い、国民はネットを通じて、制限付きながら、ようやく自分の意見を自由に表明できるようになった。

 ネット上に現れたのは、60年以上中国政府によって抑えられてきた反政府および反日的な言論であった。日本の政府及び国民が戦後構築した平和国家としての日本像を理解しようとせず、戦後処理への不満を表明したものがネット上では幅を利かせている。

 こうした状況は、中国の外交政策や鎖国、社会主義制度に起因した問題であり、日本には何の責任もない。だからと言って、日本への理解の欠如、中国人の対日イメージの悪化の原因をすべて中国政府の政策、教育、メディアに求めているだけでは、問題解決の糸口は永遠に見出せないであろう。

情報伝達ルートの制度化と
信頼関係の構築が先決

 今年11月に開催される北京・APECで安倍総理と習近平国家主席の首脳会談が実現するのか否か、議論が活発に行われている。

 当然ながら、関係改善に向けて、首脳会談がきわめて重要な役割を果たし、その実現によって国内外への宣伝効果、経済、文化などの面での交流促進効果を期待されている。特に中国のように、政治動向がすべての分野に強い影響を与える国の場合、首脳会談が実現すれば、中国側からアプローチしてくる日中間の交流は、すべての分野で推進しやすくなるであろう。

 目下、来日する中国人観光客者数は大幅に増えているが、学界や言論界、地方政府レベルの交流など、政治に影響されやすい分野での交流回復は遅れている。そうした状況下において、首脳会談の実現が中国国内における日本との交流敬遠の雰囲気を大幅に軽減させる効果があることは言うまでもない。

 しかし先述の通り、歴史認識の問題が双方の国民感情を先鋭化させ、断続的ながらも日中関係悪化をもたらす大きな一因となっている。歴史問題が発生するたびに、首脳会談は行われなくなり、政治面にとどまらず、経済や文化など交流も著しく後退する状況は両国にとって望ましいことではない。

 歴史問題や領土問題に起因して問題が発生した際、首脳会談の実現は国民世論によって影響されやすく、時として簡単に実現できない局面にも直面するであろう。そうなった場合でも、軍事衝突を回避し、さまざまな交流に支障をきたさないよう、日中両政府による事態のコントロールが不可欠である。

 そのためには、首脳会談の実現に向けた努力以上に、日中政府間の情報交換ルートを各方面において制度化していくことを優先的に取り組んでほしい。