やせ我慢をするから、「自分の限界」が伸びていく
最近は、「暑さ」や「寒さ」への耐性が弱い子どもが目立ちます。
サマースクールに行くと、「暑い〜、だるい〜、がまんできない〜、エアコンつけて〜」と不満を口に出す子どもがいます。
エアコンを入れれば快適にはなりますが、エアコンに頼り切った身体は、人間が本来持っている「暑い環境にも適応する力」を奪ってしまいます。
「炎天下で遊ぶと熱中症になるからダメ!」と言って、外に出ず、エアコンの効いた部屋でおとなしくしている子どもと、炎天下の中で、水分を多めに取りつつ、大汗をかいて野外で遊び尽くしている子どもでは、どちらが「暑い環境」に適応できるでしょうか。
間違いなく、後者です。普段から暑さに慣れていれば、「あ、そろそろ水を飲んだほうがいいかな」「そろそろ、日陰に入ったほうがいいかな」という、脱水症状の「限界(リミット)」を、体感覚的に理解できるようになると思います。
私は高校時代、野球部に所属していました。
私が高校の当時は、どの野球チームもそうでしたが、
「バテるから、練習中に水を飲んではいけない!」
といわれた時代でしたから、喉はカラカラ。練習中に、「まわりの景色が銀色に見えた」こともあります。
おそらく、脱水状態になっていたのでしょう。
「これ以上ガマンすると、死ぬかも」と焦り、ボールを拾いに行くと見せかけて、こっそり水を飲んだことも、何度もありましたし、「コーチに隠れて水を飲むテクニック」も、何パターンも身に付けたものです。いまはない、理不尽な時代の思い出です。
しかし、野外活動でのたくましい工夫が、将来の仕事に役立つわけですし、「もう、これ以上は限界だ」と嘆きながら、それでもやせ我慢を続けるうちに、少しずつ、自分の身体が暑さに順応し、強い体力をつくり上げてくれたのです。
人間には、自分の「身体の変化」を本能的に察知するプログラムがあります。ところが、軟弱な環境にばかり身を置いていると、このプログラムが発動しません。
体温調節がうまくできない子どももいますし、「熱中症」を知らない子どももいますから、「暑い日は、のどが渇く前に水分を大目に補給する」など、ある程度は、大人が予防措置を講じる必要はあるでしょう。
しかしそれ以上に、子どもを日常的に外で遊ばせて、「暑さに負けない体力」をつくることのほうが、圧倒的に大切なことなのです。
(次回、【第8回】は、2014年10月15日(水)の掲載です)