ベストセラー『「悩まない人」の考え方』著者の木下勝寿氏が「マーカー引きまくり! 絶対読むべき一冊」と絶賛する本がある。『スタートアップ芸人 ── お笑い芸人からニートになった僕が「仲間力」で年商146億円の会社をつくった話』だ。著者・森武司氏は2005年にFIDIAを創業して以来、18年連続増収増益を達成し、年商146億円の企業へと成長させた。その成功の裏にはどんな秘密があるのか? 今回は、FIDIAグループのイルミルドで活躍するAmazonチーム責任者・加納敬章氏にインタビュー。本の中でも触れられている「ジェフ・ベゾスに直接連絡した」エピソードや、加納氏が語る“問題解決に必要なたった2つのこと”について、詳しく話を聞いた。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

Amazonの社長に連絡するしかなかった――その理由とは?
――『スタートアップ芸人』の中には「問題を解決するためにジェフ・ベゾスに直接連絡した」という衝撃的なエピソードが出てきます。加納さん、実際にそんなことがあったんですか?
加納敬章(以下、加納):はい、本当にありました(笑)。
僕たちイルミルドは、化粧品やサプリメントのD2Cブランドをいくつも展開していて、Amazonや楽天などを通じて販売しています。
その中でもAmazonは非常に重要なチャネルなんです。
ただ、Amazonには定期的に“ランダムな安全性審査”があって、問題がないはずの商品が、何の前触れもなく突然「販売停止」になることがあるんです。
――えっ、問題がないのに販売停止にされてしまうことがあるんですか?
加納:そうなんです。もちろん、まずは通常のルートでAmazonの担当者に連絡をします。でも、向こうもおそらく何百もの企業を抱えているので、すぐに対応してもらえるとは限らない。
その間、商品は販売停止のまま。1日100万円以上売れている商品が1週間、下手すると1か月止まることもある。これは本当にシャレになりません。
だから、社内でもこの事態が起きたら、担当者には「他の仕事は全部後回しにしてでも最優先で対応して」と伝えています。それくらいのインパクトがありますから。
――そうなると、もはや普通の対応では解決できないですよね。
加納:そうなんです。僕たちは「土日でも夜中でも動くから、なんとか一緒に解決策を探してほしい」と、Amazon側にも真摯にお願いしました。
そうやってやりとりを続けていく中で、Amazonの方が「代表への連絡窓口はこちらです」と教えてくださったんです。
――つまり、その「代表」とは……?
加納:僕が実際に連絡を取ったのは、当時のAmazonジャパンの社長であるジャスパー・チャン氏です。その窓口に、こちらの状況と損失額、それから僕たちの“本気度”をメールで伝えました。
もちろん返事がきたわけではありません。でも、その後、何週間も動かなかった件が、急に解決されたんです。たぶん、見て動いてくれたんじゃないかと思っています。
ちなみに、イルミルドからは過去にジェフ・ベゾス氏に連絡を取ったこともあります。
問題解決に必要なのは、たった2つのこと
――でも、社長にメールを送るなんて、誰にでもできることではないと思います。そこまでやれた背景には、何があったのでしょうか?
加納:正直、「連絡したからうまくいった」という話ではないと思っています。
僕が本当に大切だと思っているのは、「自分にできることはすべてやること」と「熱量を伝えること」、この2つです。
たとえば、「代表に連絡しても意味ないかもしれない」と思って、やめる人も多いですよね。でも、僕は「やれることは全部やる」というスタンスで動いていましたし、連絡する前にも、社内外でできるあらゆる対応をすでにやりきっていた。
そういう背景があるからこそ、「この会社は本気で困っている」と受け止めてもらえたんじゃないかと思います。
――まさに、泥臭くてもやりきる姿勢が伝わったということですね。
加納:はい。メール1本で奇跡が起きたわけじゃないんです。
「全部やったうえで、なお最後の手段として連絡した」からこそ、動いたのかなと。
ビジネスでは問題が起きたとき、「どうせ無理だろうな」「言っても変わらないかも」とあきらめたくなることも多い。
でも、相手を責めるのではなく、自分ができることを全部やって、真摯に熱量を伝える。それが最も重要なことだと思います。
トラブルに直面したとき、最初にすべきことは?
――最後に、読者のビジネスパーソンに向けて、問題に直面したときにまずやるべきことを教えてください。
加納:最初にやるべきことは、「自分の中にある“やれることリスト”を全部書き出してみること」だと思います。
その中で、“面倒だから後回しにしていたこと”や“どうせ無理と決めつけていたこと”があったら、まずそこから動いてみる。
そして、クレームではなく“お願い”として、相手に真摯に熱量を伝えること。
僕自身、『スタートアップ芸人』を読んで、「まず行動する」「熱量で仲間を動かす」という姿勢を改めて学びました。これはどんな立場の人にも通じる大切なスタンスだと思います。