蔵治准教授によると、落下による雨粒のエネルギー量は通常の20倍にものぼるという。木の根が露出するほど山の地表が抉りとられるようになり、剥がれ落ちた土砂が山の斜面を滑り落ちて下部に流出し続けることになるのである。

 放置された人工林は単に保水力を失うだけではなく、土砂を流出させ、山そのものを崩壊させる現象を引き起こしていたのである。そうした影響が近年の土砂災害の特徴となって現れている。土石流が流域の境を越えて発生すること、そして流木による被害が拡大していることだ。

 土砂崩れや土石流、川の氾濫といった災害を防ぐため、ハード面の対策が講じられてきた。砂防ダム(堰堤)や治山ダム、治水ダムといったコンクリート構造物で、土砂や水の流れを遮断する方策である。いわゆる力技だ。

砂防堰堤、治山ダム、治水ダムは
森林そのものの再生につながらない

 確かにハード面の強化が防災・減災につながる地域や箇所はあるが、そうではない箇所も少なくないと考える。留意すべき点が2つある。

 1つは、砂防堰堤や治山ダム、治水ダムなどをどれだけ造っても、森林そのものの再生にはつながらないという点だ。砂防堰堤は現在、全国に約6万2000基ある。ダムの数の20倍ほどだ。しかも、新しい砂防堰堤が毎年数百のペースで造られている。砂防堰堤を造っても土砂で埋まってしまい、新たに造るという箇所もすくなくない。

 砂防堰堤や治山ダム、治水ダムなどがもたらす由々しき現象もある。山と海は川の中を流れる水と土砂でつながっている。ところが、川の上流部に砂防堰堤や治水ダムなどがたくさん造られたことにより、山から海への水や土砂の供給量のバランスが崩れているのである。このため、川底が低下したり、海辺が削られるといった事態が広がっている。

 また、山の養分が海に注がれにくくなるので、海の中の栄養分も減少してきているのである。つまり、山の管理を怠り、荒れたままにしておくことが、山のみならず川や流域、海をも脆くしているのである。国土全体の弱体化を呼び寄せていると言っても、過言ではない。

 土砂災害対策はより複合的に行うべきで、コンクリートの力に過度に依存するのではなく、荒れ果てている森林の再生を地道に進めることも必須である。国土を強固なコンクリート構造物で覆えば、国土強靭化につながるというような単純な話ではない。国土交通省と林野庁などが縦割りで対処するのではなく、連携して取り組むべき最重要課題である。

「木を切り倒す間伐方法ではないので、誰でもできます。本来のやり方ではありませんが、日本の森があり得ない状況になっているので、それを何とかするためのものです。プロではない私たちみたいな一般の人が森の手入れに加われるようにしないと、日本の森は本当に危ないと思います」

 こう語るのは、神奈川県相模原市藤野の住民グループ「トランジション藤野」の竹内久理子さんだ。