算数で、子どもがつまずきやすい「主なポイント」

 算数の問題は、学年が上がるほど、「抽象度」が高くなります。計算の処理能力だけでは、徐々に太刀打ちできないようになっていくのです。

 とくに、子どもがつまずきやすい「繰り上がり計算・繰り下がりの計算」「文章題」「3ケタ÷2ケタの割り算」「分数」「図形」では、「考える力」が不可欠になってきます。

・【繰り上がり、繰り下がりの計算】
「10進法(10でケタが上がること)」や「『位』の概念」を理解する力が必要です。
 たとえば「6+7」の答えは「13」ですが、「10進法の概念」がわかっていない子どもは、どうして13になるのかを理解しようとせず、「6+7=13」とそのまま暗記しようとします。「10進法の概念」がわからずにただ暗記をしても、低学年時代はバレませんが、5、6年になって整数系の思考力問題で挫折します。

・【文章題】
「この問題では、何が問われているのか」を考える力が必要です。
たとえば、

「100メートルの道の両脇に、『10メートル間隔で1本ずつ』木を植えたとします。全部で何本の木を植えることになりますか?」


という問題があったとき、考える力の浅い子どもは、文章の中にある数字だけを見て
「100÷10=10本」と短絡的に答えを出します。

 10メートルに1本ずつ植えると、木と木に挟まれた空間が「10」あることになるので、片側に植えられる木は11本。さらに問題には「両脇に」とあるので、「11×2=22本」が正解です。

 この文章題は、「じっくりと両脇に植えてある木をイメージしつつ、この問題はどんなことを問うているのかをモレなく矛盾なく考える」ことができれば、すくなくとも、「10本」という答えは、出てこないはずなのです。
 とはいえ、「ただ計算の処理を速く解く」ことだけをしてきた子どもには、ありがちな落とし穴ともいえます。

・【3ケタ÷2ケタの割り算】
「割られる数の中に割る数がいくつあるか」を、「おおよそで考える力」が必要です。

 たとえば、「542÷38」という割り算を解くとき、「38」を「30」あるいは「40」と、おおよそで見なす必要があります。
 この「おおよそのメドをつけるセンス」を私は「数感」と呼んでいて、いろいろな思考力問題でも必要とされる力ですが、「3ケタ÷2ケタ」だけでいえば、「慣れ」によって身に付けることができます。

・【分数】
 算数・数学が苦手なまま大人になってしまった人の大半は、分数で失敗しているといっても過言ではありません。
 食塩水問題を好きだったと言い切れる大人がほぼ皆無であるように、「割合概念は、人の脳にとって、とらえづらい課題だ」ということが根本にあります。これだけで一冊書けるくらいですが、少なくとも分数には「実際の量(4分の3リットルの水)」と「割合(バケツ4分の3の水)」の2つがあることだけは押さえておきたいところです。

・【図形】
「図形」の問題のキモは、「必要な線」を選択的に見たり、見えない「補助線」をイメージする力です。
 子どもが「雑音の中からでも、お母さんの声を聞き取ることができる」ように、図形問題が得意な子どもは、たくさんある「線」の中から、自分に「必要な線」だけを見て取ることができます。また、必要な補助線(そこにない線)が光って見えるのです。

その力をどう伸ばすかは、『小3までに育てたい算数脳』(高濱正伸/健康ジャーナル社)に詳しく書きましたが、「図形パズルなどを『好き』に育てること」や「外遊びや立体を使った遊びに熱中すること」が大切です。