忙しすぎる高学力の生徒
家庭と結ぶ食育行事も重要

 今回、学校における「昼食の実態」についてもアンケートで尋ねてみました。

 都内の学校の場合、中学では学校給食が多く実施されていますが、高校になると弁当、売店、学食という順番で、昼食を取っている様子がうかがえました。学力と弁当の相関はあまり明確に出ていません。

 その理由の1つとして、「手作り弁当」だけでなく、出来合いの「コンビニ弁当」なども含んで回答されたことが考えられます。

 実際、「働く母が増え、簡単な料理が主になった。有名料亭の弁当を詰め替えて持ってきた生徒がいた」(都心部・私立学力上位校)という現場からのコメントもありました。

 また、「中学から入学してくる家庭は子どもの食事についても関心があり毎日お弁当を持参してくる生徒が多い。しかし共働き家庭が多く忙しいせいか冷凍食品を使用する家庭も多い。生徒はカロリーのみで食べるものを決めてしまう場合が多いのが気になる」(都区部・中堅私立校)。

 それでも、「昼食については、精神的な安定も考えると、お弁当を家庭から持ってくることを勧めている」(都心部・中位校)と弁当の良さを推す声は全体的に多く見られました。

 私立の超難関中高一貫校からはこのような声が寄せられていました。

「食物アレルギーの生徒が今年の4月からものすごく入学してきました。中には食べていた部屋に入るだけで眼が腫れたりする重度の生徒も。低GI食品での献立がもっと広がれば勉学にも身体的にも良い影響が出るのではないかと」(保健室看護師)。

「忙しいご両親も多く、栄養のバランスのとれた食事を家族みんなで食べることが難しくなっている。高校生は塾などで忙しく規則正しい食事ができているとは思われない」

「まず時間が取れないので、肥満、やせ、摂食障害など食関する健康問題には保健室で個別に対応している」。

 こうした声を聴くにつれ、高学力の生徒にこそ、より実践的な食育が必要なのかもしれません。

「食事(特に朝食)の重要性を理解し実行できると、体調不良ややる気のなさも少なくなると考えます。しかし保護者の理解も必要なため、食育は家庭も巻き込めたらより成果が出るのではないかと思っています」(都区部上位校)という現場の本音でしょう。

 その点、私立女子校の中には食育への取り組みを強力に進めている様子がうかがえる学校が多く見られました。大妻中野中学校・高等学校もそうした学校の1つです。

「食は生命の源。本校では昨年の校舎新築の際に、調理室を環境の良い最上階の8階に設置し、手元カメラなど最新機器を備えました。自分たちで育てた大根やサツマイモなどを調理し、”地産地消”の学習体験を目指しています。夏休みには自身で調理した1週間の献立表の写真と家族のメッセージも添えたレポートを作成しますが、どれも家族の顔が伝わる力作。実践的な学びは女子教育の大事な要と考える本校の名物行事」(宮澤雅子校長)というように、家庭と学校の食育が結びつくような学校行事を行うことも、取り組みの具体策としては有効ではないでしょうか。

 学校における健康診断データの重要性については、「健診のデータを活用すればもっと食育に貢献できる」という、今回のアンケートで寄せられた意見からも、その大切さが分かります。

 

木村もりよ [医療法人財団綜友会理事・医学研究所所長] 
 
1990年筑波大学医学群卒業。
内科医。97年ジョンズホプキンズ大学MPH。
米国CDCセンタ施設研究コーディネイター。
2002年厚生労働省入省。14年より現職。
 
医療法人財団綜友会