広範囲で発見された「ひずみ」
南海トラフ大地震は本当に起きるのか?

フィリピン海プレート。赤い線が南海トラフ

 それでは、こうした地震発生のメカニズムを踏まえた上で、今後日本のどこで巨大地震が起きる可能性が高いのかを、考えてみよう。

 日本列島は、プレートが沈み込んでいる場所にあるという意味では、地震発生のリスクはどこにでもある。しかし、かねてより発生が危惧されている南海トラフの巨大地震については、リスクが最も大きい地震の1つと言える。GPSを使って計測したデータによると、東海沖から四国沖にかけての広い範囲で「ひずみ」がたまっていることがとらえられている。

南海トラフにたまったひずみ。赤い部分ほど大きい。
データ提供:京都大学防災研究所 西村卓也准教授
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 さらに、東海沖や四国南東沖のプレート境界をエアガンで調べると、東北沖に存在していたような巨大なひずみをためる“山のような構造”がいくつも見つかっている。

 南海トラフにおける直近の大地震の発生は、70年ほど前。過去の発生間隔には長短はあるが、確実に大きな地震が起きているので、「そう遠くない将来、巨大地震が起きる」と多くの研究者が考えている。

 南海トラフの巨大地震で危惧されているのは、人口が多い地域に激しい揺れが襲いかかること。そして地震発生後、極めて短い時間で大津波が沿岸部に到達することにある。早い地域ではわずか数分で到達すると予想されており、高台への避難を含め、今から念入りに対策を検討しておかなければならない。

 では、来るべき巨大地震を見据えてとるべき対策とは何か。それを考えることが何より重要だ。

 地震の揺れへの対策については、日本では1923年の関東大震災以降、大きな地震のたびに建築基準法などの法令が改正され、建物の耐震化が進められてきた。しかし建築物は一旦作られると長期間利用されるため、古い耐震基準で建てられた建物や構造物については耐震補強を急ぐ必要がある。また建物が倒壊を免れても、天井が落ちてきたり室内の家具が倒れてくれば、人が下敷きになる恐れがある。更に屋外への脱出や避難を阻む要因にもなる。自分の家の中に潜むリスクについても一度、考えてみてほしい。

 津波については、東日本大震災以降、各地の海岸に近い場所には、標高を記した海抜表示板や津波警戒標識などが次々と設置されている。海岸近くに住んでいる人はもちろんのこと、レジャーで訪れた場合でも、自分がいる場所の標高を確認し、いざという時はどこに避難すればよいのかを常に考えるよう習慣づけて欲しい。

 更に巨大地震が発生した場合、各自が迅速に安全な場所に避難するのが大前提だが、その際に携帯電話などの通信手段が使えなくなっている可能性が高い。家族がバラバラになってしまったときに備え、集合場所を決めておく必要もある。こうした細かいことまで、家族や会社でできる限りのシミュレーションをしておくことが、命を守ることにつながっていく。