航空機エンジンメーカーは、このヘルスモニタリングシステムを活用することで、常にエンジンの状態を把握し、交換や修理が発生するタイミングを見越して予め部品を手配しておくなどの対応を取っている。このような仕組みがあれば、エンジンに負荷がかかりやすい離発着の多いユーザーについては単価を上げるなど、ユーザーの使い方に応じて包括契約の単価を設定することも可能となる。

 航空機エンジンメーカーが包括契約やヘルスモニタリングシステムを導入した背景には、前回にも取り上げたLCCの台頭がある。自社で整備工場を保有し、数多くの整備士を抱えている大手エアラインとは異なり、LCCの場合は、整備に関する技術、ノウハウ、設備などを十分に持ち合わせていないケースが多いため、メーカーが丸抱えでアフターサービスを提供する方が、エアラインにとってかえって好都合になるわけである。

 現在では、航空機エンジンメーカーは整備拠点も保有するケースが大半であり、エンジンを販売するだけでなく、販売後のほぼ全てを請け負うワンストップサービス会社となりつつある。

 このような航空機エンジンメーカーの変貌は、LCCのみならず大手エアラインにも大きな影響を与えつつある。前述のとおり、大手エアラインの多くは自社で整備工場を保有し、数多くの整備士を抱えているわけだが、航空機エンジンメーカーに整備を丸ごと委託するエアラインが増えていくと、自社で整備するよりも委託する方のコストメリットが大きくなり、自社の整備能力を減らして丸ごとメーカーに委託するインセンティブが働きやすくなる。

 その結果、エンジン整備に関する情報やノウハウはエアラインからメーカーにシフトし、メーカーは顧客であるエアラインをロックイン(囲い込み)しやすくなっていく。

製造業そのものがサービス産業化

 このようにメーカーがITとサービスを駆使して顧客をロックインするという発想は、航空機産業に特化したことではない。顧客に販売した自社製の建設機械をオンラインでモニタリングしているコマツの事例は有名であるし、アップルがiTunesというソフトを介して、スマホやタブレットを使用している顧客を巧みにロックインしていることは広く知られている。

 航空機エンジンメーカー、コマツ、アップルに共通して言えることは、彼らが単にハードウェアを販売するだけでなく、顧客に対して新しい価値をもたらすサービスを提供することで、結果として顧客を巧みにロックインしているということである。