業界再編に動いた地方銀行の雄、横浜銀行。東京に本店を持つ東日本銀行と経営統合を検討することで11月に基本合意したが、それを契機に80年来のある宿願を果たせるのではとの機運がひそかに高まっている。
「微妙な線だがチャンスが生まれる土壌はある」(横浜銀幹部)
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横浜銀の宿願は頭取の変遷をたどればすぐに合点がいく。約80年もの間、生え抜きの頭取が一人も出ていないのだ。
初代頭取が1935年に交代して以降、横浜銀は他の事業会社や日本銀行から頭取を迎えてきた。そして、49年以降は一貫して旧大蔵省出身者が頭取に名を連ねる。特に75年から前頭取が退いた2011年までの36年間は大蔵事務次官経験者が歴代頭取を務めたため、大蔵次官の“指定席”ともいわれた。寺澤辰麿現頭取も次官経験者ではないが、やはり大蔵OBだ。
この間、生え抜き頭取誕生の機運が高まったこともあった。過剰接待問題で大蔵省が窮地に立たされ、天下り批判が高まった90年代後半には平澤貞昭頭取(当時)から、次期頭取を行内から選ぶことを示唆する発言も飛び出した。しかし、結局実現には至っていない。
“役割分担論”が着地点か
その横浜銀において今、生え抜き機運が再燃するのは、東日本銀との経営統合で銀行を傘下に入れる持ち株会社を設立する予定だからだ。その会長か社長に寺澤頭取が就くとみられ、頭取ポストが空く。兼任も考えられるが、持ち株会社の本社は東京都と決まっているため、「東京と神奈川を行き来して二つのトップを両立するのは難しいのではないか」(横浜銀関係者)という声がある。