親の対応の大きな間違い

 ――そうなんですか。

 その後、この父親は、一人暮らしをさせました。
 でも、この対応には大きな間違いがあります。

 ――大きな間違い!?

 はい。その時点で、もうこれでは一緒にあなたとは生活できない。「人里離れたところで暮らすしかないですね」という対応をすべきです。

 ――「人里離れた~」って?

 入りたくないところに行かせる。行きたくもないところに隔離するのがポイントです。アパートを借りてあげてそこで一人暮らしさせることは隔離ではないんです。暴力は社会から隔離されるべきです。

 ――キーワードは「隔離」ですか!

 もっともっと、わが子が隔離されることを場合によってはよしとする親が出てこないといけません。
 ここで大事なのは、親が強い意志を持って精神科医に接すること。病院サイドも入院を嫌がる傾向がありますから、親のほうから相当強い意志を持って入院のお願いをしないと受け入れてくれないケースだらけです。精神科病院がなかなか入院を受け入れてくれないことを知りつつ、「うちの子は家で暮らせる状態じゃない! ここに入院させてください」と真剣に強く訴えるのです。これは年齢が小さいうちから実行すべきことです。

 ――とはいうものの、入院・入所は難しくないですか?

 はい。ですので、本書ではすぐにできる隔離の一方法として『タイムアウト法』を紹介しています。
 ただ、私は病院への入院や施設への入所がどんなに時間がかかることなのかよくわかっていて、あえて言っているのです。
 ほとんどの精神科医が、教育的な視点や予防的な視点を持っていませんので、まずは消費者側(保護者)が賢くなるしかないのです。
 ただ、現実はまったなしの状況です。
 このままでは、次の佐世保事件が次々と起きる世の中なんですよ、ということを親自身が強く認識する必要があるのです。具体的な対処法は本書をぜひ読んでみてください。

――わかりました。
(第3回につづく)

<著者プロフィール>
臨床心理士/専門行動療法士/行動コーチングアカデミー代表。兵庫県西宮市生まれ。
常識にとらわれない独自の指導プログラムにより、さまざまな子どもの問題行動を改善させる行動分析学者。数万件以上の難問題を解決してきた手腕から「子育てブラック・ジャック」と呼ばれ、日本各地のみならず世界各国から指導依頼を受ける国際的セラピスト。年間のべ1000件以上の相談活動を行い、これまでの相談実績は数万件以上。桜花学園大学大学院客員教授など研究者としてのキャリアを経て、2012年に長野県西軽井沢に5000坪の敷地を買い取り、「行動コーチングアカデミー」を設立。発達障害、自閉症、不登校などの問題解決に関わる人材育成を行い、現在、日本初の行動分析学を軸とした私立幼稚園の設立を準備していることでも注目を浴びている。「日本行動療法学会内山記念賞」(1999年)、「日本教育実践学会研究奨励賞」(2003年)、「日本行動分析学会学会賞(論文賞)」などを受賞。行動科学系の2大学会で初のダブル受賞となる。『NNNドキュメント』『スッキリ!!』(日本テレビ系)では、 「今、最も注目されている教育者」として紹介。『あさイチ』(NHK総合)他にも出演。本書では、子育てにまつわる具体的な『行動の処方せん』を公開。著書にベストセラーとなった『叱りゼロで「自分からやる子」に育てる本』(大和書房)、『メリットの法則――行動分析学・実践編』(集英社)、『拝啓、アスペルガー先生――私の支援記録より』(飛鳥新社)、『自閉症児のための明るい療育相談室――親と教師のための楽しいABA講座』(共著、学苑社)などがある。
【奥田健次オフィシャルブログ】
http://www.diamondblog.jp/kenjiokuda/