穀物価格の高騰は、いよいよ食糧危機すら懸念させる段階となった。背景にあるのは、空前ともいえる需給の逼迫、そしてなだれ込む投機資金だ。特に、近年になり穀物相場に進出してきた「コモディティ・インデックス・トレーダー」は、市場そのものを変質させつつある。

2年で2倍以上もの高騰 穀物の国際価格の推移 「小さな池でクジラが暴れている」

 市場関係者は、穀物相場の現状をそう表現する。

 2006年秋頃から顕著になった穀物価格の上昇は、昨年夏以降さらに加速。今年に入り、いずれの商品も過去最高値を更新した。この2年で、トウモロコシと大豆は2.2~2.5倍、小麦は一時約3倍(いずれもシカゴ市場価格)にまで高騰。特にコメに至っては、国内需要優先やインフレ抑制を理由に主要輸出国のインドネシアやインドが輸出規制に踏み切った結果、年初以降は2.7倍(タイ輸出価格)に暴騰、途上国各国で暴動が発生する事態となった。

 この高騰劇の背景には、まず需給の逼迫がある。4月9日付の米国農務省報告によれば、07/08年度の世界の穀物の予想期末在庫率は15・0%。これは食糧危機といわれた1972/73年度の15.4%すら下回る数値だ。

 ことに懸念されるのがトウモロコシで、07/08年度期末在庫率は13.2%。世界輸出の6割を占める米国では9.8%、さらに日本貿易振興機構北米課の試算では、08/09年度の予測はじつに4.8%だ。こうなると、需要20日分を切る、まさに“危機的”な水準である。

 需給逼迫の要因は複合的である。基底には世界的な人口増と新興国の経済成長による需要増があるが、さらにバイオ燃料の需要増、異常気象による供給減、各穀物の作付け転換などが、影響し合っている。

 たとえばトウモロコシの場合、昨年は記録的な豊作だったにもかかわらず需給が逼迫した。周知のとおり、前年比で50%増というバイオエタノール用の需要のためである。このバイオエタノール需要は、原油価格と連動する。またトウモロコシと大豆の作付けは競合するため、相互に影響を与える。昨年は前者が優先され、大豆の供給が減少、需給逼迫を招いた。

 作付け動向は相場の重要な材料となるが、農家は逆に相場動向を睨みながら作付けを決める。不透明な大豆相場の先行き、そして天候不順などから、今年の作付け動向はいまだ定まっていない。