命令形の「!」マークよりも、疑問形の「?」
『コミック版』では、突然、工場閉鎖を通告され、窮地に追い込まれた主人公の吾郎たちに、学生時代の恩師ジョナは答えを教える代わりに、次々と質問を浴びせます。そして自ら考えて、答えを見つけ出すことによって、吾郎たちが成長していくストーリーが展開されています。
ゴールドラット博士は、このプロセスこそが、学びのプロセスとして最高の方法だと心から信じていました。それは、物理学者としてのゴールドラット博士の次の信念に基づくものだったのです。
『学ぶことの最大の障害は答えを教えることではないか? それは、自分で答えを見つける機会を永久に奪ってしまうからである。自分で論理的に考えて、答えを見つけ出すのが、人が学ぶための唯一の方法だと私は信じている。
人が考えるようになるためには、命令形の「!」マークよりも、疑問形の「?」マークの方がはるかにいい』(エリヤフ・ゴールドラット)
吾郎たちは、ジョナから理論を学びながら、自分たちの現場の問題を自ら考えて、答えを見つけ出していきました。このプロセスは、理論を学びながら、応用問題を自分で解く自然科学の学び方と一緒なのです。
ゴールドラット博士が20歳のときに立てた人生のゴールは、「人に考え方を教える」というものでした。本書を科学と教育という面からも読み解いていただければ、博士の伝えたかった本質がより見えてくるのではないでしょうか。
ゴールドラット博士が愛した日本の言葉
博士は、日本の文化をとても高く評価していました。ちなみに、ゴールドラット博士が最も好んだ日本語は「和」でした。あるとき、TOCを実践している日本企業の現場でよく耳にする「和」という言葉に興味を覚えたようです。
「和」を英語で表現すると、「Harmony(調和)」「Peaceful(和やか)」「Sum(足し算の和)」「Japanese(和風)」の意味だと伝えると、博士はこの言葉を本当に気に入って、海外の講演でも頻繁に口にするようになったほどです。