エッセンスは格差拡大の証明

 本書のエッセンスだけをいえば、おそろしく簡単だ。資本収益率(ほぼ4~5%)が所得成長率(ほぼ1%~2%)よりも高いことを、各国の歴史データで示している。これを高所得者と高資産保有者がますます富むことの理由に挙げ、多くの国での格差拡大を証明したのである。格差社会を好まない彼はこの現状を打破するため、資本収益率を下げることが有効と考え、資本課税の強化を主張する。それも国際協調のもとですべての国で課税強化策を採用すべしという政策提言になる。

 ただし、こうした単純なことを主張するために、様々な角度からの検討が必要であり、ピケティは学者の良心に基づき、それを丁寧に行っている。

 この本にある従来の本と違う新しさというのは、20ヵ国の大量の歴史データである。それによって、200年以上の歴史のなかで、r=資本収益率とg=所得成長率を比較している。第1次と第2次世界大戦の間と、第2次大戦後のしばらくの間は、rとgが比較的近くて、格差の小さい時期だったが、それ以外ではrはgより大きく、格差の大きい時期であることを明らかにしている(図表1)。

 ピケティの本では、1913~2012年にかけて課税後の資本収益率がかろうじて所得成長率を下回っている(図表2)。

 これらの主張は、かつてノーベル賞受賞の経済学者であるクズネッツがいっていた逆U字仮説を覆すものだ。つまり、経済成長について、はじめは格差が拡大するが、一定レベルを超えた先進国では経済成長に伴い格差が減少する、との主張に真っ向から反論している。1930年~80年にかけて格差が縮小していたのは一時的現象であって、資本主義では、資本収益率が所得成長率より高いのが常で、先進国でも格差は拡大するというのがピケティの主張だ。