「謝罪は判決では得られない」と言われて

 和解に向けた話し合いが進む中、裁判の途中で、裁判官が交代した。新しい裁判官に、「和解でしか得られないものもある。謝罪は判決では求められない」と教えられた。

 当時6歳の明日香ちゃんを亡くした佐々木純さん、めぐみさん夫妻は、和解を受け入れるかどうかで、意見が分かれた。

「うちの人(純さん)は最初、和解したくないと言っていたんですけど、協議が進むうちに考えが変わっていきました。和解受け入れを決定的にしたのは、舞鶴の女子高生刺殺事件で犯行を疑われた人物が、最高裁判所での無罪確定の後に、人を刺して逮捕されたという事件(今年11月5日に大阪市内で容疑者は殺人未遂容疑で逮捕)でした。どんな結果になるにせよ、最高裁判所まで進んだとしても本質的な解決にはならないならば、和解をして、対話を通じて真実を求めていったほうがいいだろうと考えたんです」

日和幼稚園訴訟「本当に和解でよいかすごく悩んだ」 <br />遺族が語った葛藤と新たな一歩小さな子どもたちを抱えながらの、3年4ヵ月の裁判だった
Photo by Yoriko Kato

 裁判所も、遺族側の要望に応じて、子どもを預かる機関の防災に対するあるべき姿勢についての認識を、和解条項の前文という形で示してくれることになった。異例の対応だった。

「幼稚園側が法的責任を認めたのと、裁判所が学校の防災についての意見を付けてくれることになり、これ以上法的な面で求めていくことはなくなりました。残るは、謝罪を求めていくということで和解を承諾しました。そこまではすごく悩みました。でも、法と道徳は分けて考えていこうと思いました」(美香さん)

和解条項にある「心からの謝罪」は
どう実現されるのか?

 裁判所と当事者双方が参加する進行協議だけでも、15回ほどを数えた。遺族はその全てに出席した。そうした交渉を経て和解が成立し、裁判所が作成した和解条項は、一審判決を全面的に踏まえた内容になった。12月3日に交付された和解調書からその一部を紹介する。

【前文】
 当裁判所は、一審及び二審におけるこれまでの審理により、本件証拠から認定される具体的事実関係の下では、私立日和幼稚園側が、被災園児らの死亡について、地裁判決で認められた内容の法的責任を負うことは免れ難いと考えるとともに、被災園児らの尊い命が失われ、両親や家族に筆舌に尽くし難い深い悲しみを与えたことに思いをいたし、この重大な結果を風化させてはならず、今後、このような悲劇が二度と繰り返されることのないよう、本件訴訟の終了後も、被災園児らの犠牲が教訓として長く記憶にとどめられ、後世の防災対策に活かされるべきであると考えるものである。当裁判所は、このような考えのもとに、幼稚園側に対しては、上記の点が裁判上の和解により明らかにされることによって、被災園児らの犠牲が後世の防災対策に活かされるようにするため、双方に対し、和解を勧告した。

 幼稚園側と遺族側は、当裁判所の上記勧告を受け止め、下記の通り、和解する。