視点をシフトして、新しい見方をする
……と見えないものが見える

 ビジネスにおいても、人生においても、ちょっとモノの見方を変えると、「ぁは~ん!」と、雲がひらけるような瞬間がくることがあります。日頃から視点をシフトしたり、広げたり、見る位置を変えたりする習慣が大切かもしれません。「視野、視点、視座……を変えてみる」KIT虎ノ門大学院の講義でも伝えている3つのキーワードはとても大切にしたい要素です。こういうことを知識として知っていることは悪くはないのですが、さらに望ましいのは、具体的に視点のシフトや視野の拡大を感じる体験を重ねていくことかもしれません。そこで、そのきっかけやヒントになる本をご紹介します。

 『やりなおす経済史』(ダイヤモンド社)蔭山克秀著

『やりなおす経済史』蔭山克秀(ダイヤモンド社)

 著者の蔭山さんは、代ゼミで人気No.1講師を務める先生です。政経や現代社会などの授業が全国に衛生放送されている方です。本書は、“本当はよくわかっていない人の2時間で読む教養入門”というサブタイトル通り、新鮮な発見とともに、世界の歴史の流れの深層を学び直せるところが素晴らしいですね。社会人のための学び直し講座というふれこみは、ウソではありません。

 私たちも、学校で世界の歴史や、経済の変遷を学んできたとはいえ、偏差値教育の中で、なぜ?を考えるよりも、なに?といつ?とだれ?を覚えることに汲々としてきました。知識として知っていること自体はよいことですが、そこに「なぜ?」を加えることで、単なる入試の知識が光を帯びてきます。本書は、まさにそんな光を与えてくれます。

 これまでの(今も)世界の経済の歴史は、すべて「欲望の体系」にそって動く国家の経済的動機がうごめいているという。つまり、人類の経済史は、欲望の歴史というわけです。そんな視点から、世界史の流れを縦軸に、各国の経済的抗争劇を横軸にして、世界の経済史を物語的に語ってくれるのです。

 例えば第二次大戦後、経済的に一人勝ちしたアメリカが、その後の冷戦対策ということで、したたかな「野良犬」対策をとったといいます。野良犬とは、戦争で疲弊していた欧州の国々。しかも、ついこの前まで敵として戦っていたイタリアやドイツにまで資金援助をするというものです。手負いの野良犬は、アメリカの出す札ビラにすっかり「アメリカの犬」になるというわけです。これがかつて歴史の時間に習った(覚えのある)「マーシャル・プラン」。

 そして、もう一匹の犬もアメリカの世話になります。日本です。日本は、ガリオア、エロアといった資金援助によってすっかり懐柔されていったわけです。

「アメリカの犬になった…」といった比喩は、少々過激ではありますが、とても分かり易いですね。

 こうしたノリで、レーガノミクス、ITバブル崩壊、リーマンショック、中国の台頭、アベノミクスなどを、まるで劇画タッチの物語を見るように面白く解説しています。

 本書を読むと、あれは、そんな欲望の抗争劇だったのか!という驚きと、歴史や経済を見る新しい視点を得たような新鮮な感覚をもつことでしょう。ビジネスパーソンに経済学の細やかな知識は不要ですが、「経済の流れ」とその「わけ」を知っておくことはとても役にたつでしょう。