最初に、生命にかかわるような聴神経腫瘍や脳梗塞、小脳梗塞による難聴を否定する必要があります。これらはMRIなどの検査をして調べていきます。その他にも、おたふく風邪が要因となって起こる「ムンプス難聴」、ピストル音など大きな騒音にさらされることによって生じる「音響外傷性難聴」、低音だけが聞こえにくくなる「低音障害型感音難聴」、蝸牛のリンパ液が漏れて聴覚・平衡障害をおこす「外リンパ瘻(がいりんぱろう)」や、精神的ストレスで聴こえないと訴える「心因性難聴」などの可能性を否定していきます。したがって、突発性難聴とは、考えうる原因を一つひとつ調べていって、残ったものであると言えます。

治療は安静が基本、1~2年の通院を
「そのうち治る」「年のせい」と思うのは危険

――治療はどのように行うのですか?

 突発性難聴の治療法は、まだ確立されていませんが、治療は安静にして、第一選択薬であるステロイド(副腎皮質ホルモン)を投与するのが基本です。また、血管拡張薬、血液粘度低下薬、ビタミン薬などを併用し、治療を行います。

 ステロイド剤を使う上で、注意しないといけないのは胃潰瘍や糖尿病の方です。一時的にステロイド治療により血糖値が上昇し、糖尿病の症状が急に悪化することもあります。治療前に糖尿病がわかれば、糖尿病の専門医と連携し、血糖検査をしながらインシュリンの量を増やしてもらうなどの処置が必要です。また、最近では、糖尿病の方でどうしてもステロイド剤を使いにくい場合には、中耳腔内にステロイドを注入する方法や、高気圧酸素治療を併用し、内耳の循環改善を図る治療もあります。

 軽症の場合は、外来通院で治療できますが、突発性難病は安静が基本であるため、重症度に応じて入院をお勧めします。なお、中・高度の聴力障害の場合は2週間ほどの入院が必要です。

 治って聴力が回復した方も、1~2年間、定期的に経過観察のために通院が必要です。聴神経腫瘍を見逃している場合もありますし、聴力が正常になっても耳鳴りがしばらく残る場合もあるからです。繰り返しになりますが、突発性難聴は一回治れば二度となりません。したがって、再発した場合は聴神経腫瘍やステロイド依存性難聴(自己免疫疾患)などを疑います。

――突発性難聴にならないためには?

 突発性難聴の原因がわかっていませんので、まだ防ぐ方法はわかっていませんが、万一、片側の耳が聞こえにくくなった場合には、できるだけ早く、病院で診断、治療を行うことをお勧めします。「そのうち治るだろう」「年のせいかな」と気軽に考えて放っておく方もいますが、時間との勝負になるので、取り返しがつかない事態になります。自然回復も時にありますが、その予測がつかないので治療するのがよいのです。そして、日常生活リズム、運動、食事、睡眠などの生活習慣に気をつけて、メタボリックシンドロームにならないことが大事です。私の経験から、突発性難聴になる方は、仕事や毎日の生活で無理をしている人に多いように思います。過度の心的ストレス、過度な労働、寝不足などによる疲れなどがあると発症しやすくなると思われますので、注意が必要です。