仕事の型を覚えてもらう――
若手の育成はそこから始まる
人材育成には厳然たるステップがある。一足飛びには絶対人は育たない。どんな仕事でも、人材育成を行う場合、最初は誰であれ、“型にはめる”ことを強く意識する必要がある。
そのためには、前提としてその職場に正しい型がなくてはいけないということになる。これが暗黙知だと、伝わるのに時間がかかる。したがって、特に新入社員を育成する場合は、伝わりやすい言語化された型を用意する必要がある。最初に間違った型にはめてしまうと取り返しがつかないので、しっかりとした型をまず用意してほしい。
しかもその型は、前回説明したように、戦略的な目的をベースとしたものでなければ意味がない。その会社に伝わる変わらない部分もあろうが、常に更新していく部分もあろう。この型のアップデートを誰が担うべきかについては後述しよう。
型の中身であるが、その職場で仕事をちゃんとこなしていくには、一体どんなスキルが必要で、どんな気持ちで何を勘所として仕事をすればうまくいくのかということが、明示されていることが重要だ。
たとえば私はコンサルタントとして野村総合研究所に入った。最初の3年間は助走期間と位置付けられた。一人前の研究員になるには3年くらいかかるというわけだが、その3年間で学ぶべき、極めて明確なスキルセットが用意されていた。
やるべきことは明確だった。それを研修ではなくOJTで行う。たとえばアンケート分析と統計分析では、個表の設計、集計、分析と3段階ある。学ぶ項目の順番は、その項目を必要とする仕事がたまたま巡ってくるかどうかによるので、人によっては学ぶ順番が前後するが、それはそれで良しとされた。
ただ、先輩がちゃんと頭の中で覚えていてくれて、たとえば「彼は国内インタビューはもう卒業だけど、アンケートはまだやっていなかった。だからアンケート分析のある次のプロジェクトには彼をアサインしよう」というように決めて、手配をしていた。その繰り返しで3年が経過した。