赤羽雄二氏は、マッキンゼーで14年間活躍するなかで、同社のソウルオフィスをゼロから立ち上げ、120名強に成長させる原動力となるとともに、韓国企業、特にLGグループの世界的な躍進を支えた人物だ。1人で7~10のプロジェクトを同時並行的に担当するなどの修羅場をくぐり、独立後の現在も複数の大企業の経営改革を進めつつ、10社を超えるベンチャーの経営支援を行ないながら年間50回を超える講演・ワークショップをこなしている。
今回はその驚異的な仕事量を実現する仕事術のうち、「メール」「会議」「資料作成」それぞれの秘訣を明かしてもらう。

全ての会議の時間を半分にする

 もし、会社あるいは部署の仕事のやり方をある程度変えることができる立場であれば、全ての会議の時間を今日から半分に減らすとよい。

 これまで大小取り混ぜて多くの会社の会議に参加してきたが、どの会社でも、どういう部署でも、会議の生産性が極めて低い。発言が少なく、間が空いて、だらだらと時間がたつ。社長やその場のリーダーがもっと仕切ればいいのに、なぜか皆、遠慮して誰かが発言するのを待つ。あるいは、誰かが一方的に長いスピーチをして、他の参加者は退屈する。

 発言が明快でなく、堂々巡りだったり、話の本筋からずれていったりしても、リーダーはまず正そうとしない。全員が我慢して聞いている。さらに、議題があっても何をどこまで達成すべきかが決まっていない会議が多く、何となく集まって何となくディスカッションをしている。最もコストがかかり、会社にとって重要な経営会議でも運営が甘い。会議ではなく社長の一人舞台だったりする。

 こういう会議を多数見るにつけ、私は何とかして会議の生産性を上げるべきだと考えるようになった。議題の明確化、説明資料の準備等に加え、特に、会議時間を半分に減らしても何の問題もないのではないかと考え、可能な範囲で実行し始めた。

 2時間の会議は1時間に、1時間の会議は30分に、30分の会議は15分にだ。やってみると全然問題がない。むしろ、テンポが上がって発言が増えていく。普段発言しない人も思わず発言するようになる。やってみるとかなり楽しい。何より、いつもよりずっと早く終わるので心の余裕ができる。会議が早く終わってから、参加者のうち何人かが本音の意見交換・情報交換を始めたりする。

 あなたが経営者、あるいは経営幹部であれば、すぐさま会議時間を半減すればよい。反対する人はまずいないはずだ。部下は会議の長さ、生産性の低さに辟易しているからだ。そういう立場でなければ、ぜひ上司を巻き込んで行動を起こしてほしい。

 全社で会議の改革を進めるには、「会議の生産性倍増リーダー」を置いて進めるといい。たとえば会議での発言時間の割合を見てみる。発言のない「間」がずいぶんあるはずだ。また、発言が質問なのか意見なのか、単なる感想なのかのログをつけ、会議の進行と目的にどこまで沿っているかを分析する。1つひとつの発言の所要時間も整理すると、一部の人間が演説をしがちなことが一目瞭然だ。

 私が支援したある企業は、「5分ミーティング」「10分ミーティング」「15分ミーティング」というのを導入し、分刻みでささっと議論してアクションに移していた。もっと長い会議ももちろんあるが、短いミーティングに慣れると、発言の量と頻度が増え、議論のスピードが大幅に上がっていく。