気心知れた太子党幹部が語る
習近平の3つの特徴

「私から見て、習近平の特徴は3つある。1つ目に、彼はできる男だ。改革を推し進めていく能力を持っている。李鵬や温家宝などと比べてもその点は明らかだ。2つ目に、彼はオープンマインドで、人の言うことにしっかり耳を傾ける。外国人のアドバイスも含めてだ。3つ目に、彼は政治的な決断ができる男だ。技術的、官僚的ではなく、政治的な決断だ。たとえば、当時中国が世界貿易機関(WTO)に加盟する決断をしたのは政治的な性質のものだった。将来的に、環太平洋連携協定(TPP)などに加入するとしたらそれは政治的な決断を要するものになるだろう。あともう一つ、彼はリスクを取れる男でもある」

 新年早々の1月9日、米ワシントンDC でシンクタンクが集中するマサチューセッツアベニューにあるブルッキングス研究所にて、中国経済に関するシンポジウムが開催された(Chinese Economic Reform: Past, Present and Future)。会場にて、米有識者からの質問に答える形で自らの“習近平観”を上記のように披露したのが、中国共産党内の“太子党”におけるリベラリスト、そして“民主派”として国内外で影響力を持つ秦暁(Qin Xiao)である。

 実父・秦力生は“抗日戦争”を引っ張り、中華人民共和国建国前後の革命に参加した“老革命”であり、秦暁は“高幹子弟”(ガオガンズーディー)、即ち高級幹部の子弟に当たる。石炭部や石油部といったエネルギー系政府機関での経験を持ち、改革開放後は中国国際投資信託投資公司総経理、招商局集団有限公司CEO、招商銀行CEO、第十届・第十一届全国政治協商会議委員などの要職を歴任している。

 同じ“老革命”の家系ということもあり、若いころから気心の知れた習近平とも近く、直接的に政策を提言ができる立場にある。同時に、経済学者(ケンブリッジ大学経済学博士)としても、中国問題を国際的に発信してきた。

 総書記を務める習近平との関係性という視点からも、秦暁の体制内外における役割が如何に重要であるか、実際にどのような発言をしているかについては、第16回コラム:拮抗する新左派・実務派・民主派たち 習近平を“洗脳”するのはだれか?(2013年11月5日)を参照されたい。