実は異論続出「健康マーク」の曖昧すぎる真実黄が主食、赤が主菜、緑が副菜を指し、各々の適切な摂取を謳う

「健康マーク」をご存知だろうか。厚生労働省が昨年から検討を重ねてきたもので、昨年7月よりデザインの公募が始まり、10月6日に選定が行われた。コンビニやスーパーの弁当、総菜などのうち、厚労省の定めた栄養バランスや総カロリーの基準をみたすものは「健康な食事」として認証され、このマークを表示できるようになる。今年の4月にはあちこちでお目にかかることになるはずだ。

 厚労省によると健康マークの目的は「健康寿命の延伸に向けて、その基盤となる健康な食事について、どのようなものかを示し、多くの方々に広く認識」してもらうことにある。そのため「コンビニエンスストア、スーパーマーケット、宅配等で手軽に入手できる料理に、健康な食事であることが一目でわかるマークをつけることで、そうした料理を選んだり、組み合わせたりすることが簡単に」できるこの仕組みを考案したという流れだ。

 国民がなるべく健康であり、医者にかからないこと。健康寿命が延びることにより、介護の手間も減ること。結果として国庫の負担も減ること。すべて結構なことである。食事の形態の変化により需要が増加した、持ち帰って食べる弁当や惣菜などのいわゆる「中食」に目をつけた点も的を射ている。つまり概略を聞く限りでは特に問題なさそうな試みなのだが、既に異論が続出している。

自己申告でお墨付きに?
食品添加物への言及もなしに疑問

 特に指摘が多いのは、マーク表示の基準を満たしているかどうかが、あくまで製造・販売元の自己申告によるものだという点である。少なくとも検査等が行われるという発表はない。自己申告により与えられるお墨付きに驚く人は多いだろう。また栄養バランスやカロリーにのみ着目していて、食品添加物等に関する言及がない点も大いに疑問だ。

「チェック機能は要望があればこれから整備する」「規制ではなく、あくまで啓蒙のための指針を示すことが目的である」「食品添加物がすべて健康に悪いわけではない」「食の安全管理は法律により別途行われている」「国によるお墨付きなどとは考えてはいない」などの回答はいくらでも思いつく。抜き打ち検査や罰則があるのなら「露見のリスクを考えれば違反する業者は少ないだろう」がここに加わるだろう。

 だが、いずれにせよこのままでは業者の自己申告のみに基づいて、「健康マーク」という省庁による事実上のお墨付きが与えられることだけは確実なわけだ。

 では来年4月以降このマークのついた商品と出会ったら、どうすればいいのか。例えばそれが単品の惣菜ではなく弁当なら「この弁当はおそらく栄養のバランスが取れていて総カロリーも高くないだろう」と仮定することなら可能である。

 栄養のバランスやカロリーに無関心な人が、なるべくマークのついた商品を選ぶことになったら、「おそらく」マークのない商品を選ぶより「マシだろう」。健康マークについてはこの程度の曖昧なことしか言えないのが現状なのだ。

(工藤 渉)

参考URL:
厚生労働省~「健康な食事」の基準と、その普及のためのマークの策定~
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000059935.html