チャレンジも必要だけど
退路は確保して
おかなければいけない

杉本 そういう意味では、僕自身、復活できたなどと浮かれていてはいけないと痛感します。

起業家対談シリーズ第6回 野尻佳孝<br />新しい価値観やライフスタイルをクリエイトする野尻 佳孝(のじり・よしたか)[テイクアンドギヴ・ニーズ代表取締役会長]
1972年生まれ。1995年に住友海上火災保険株式会社(現 三井住友海上火災保険株式会社)入社。1998年、テイクアンドギヴ・ニーズ設立。

野尻 僕らはたぶん、これから一生「臆病」なんだよ。経営って、いい時もあれば悪い時もある繰り返し。どのステータスにたどり着いたら「復活です」なんていう基準はない。

杉本 そうですね。

野尻 起業家、経営者は勝負を繰り返す中で、10戦して6勝できればすごいと思う。でも、4回は負ける試合もあるわけで。どうすれば傷の浅い負け方ができるかということが大切なんだよね。

杉本 僕自身、当時と比べていい意味で「臆病」になりました。イノベーションを起こすためには1%の可能性にチャレンジすることが必要だけど、退路は確保しておかなければいけないということを、失敗の経験を通じて学んだ気がします。

野尻 僕が今、こんなにコンサバティブなことを言うのも、苦い経験をしたからだよね。杉ちゃんはもっと痛い思いを体験した。
 失敗の経験はたしかにプラスになる一面はあるんだけど、今まさに勢いを上げて突っ走ってる若い起業家の人たちには、どうすれば痛い思いをしないで済むかっていうことを知って欲しいと思う。この『30歳で400億〜』は、そういうメッセージになっていると感じるね。

杉本 おっしゃる通りです。僕はとんでもない失敗をして、たくさんの方にご迷惑をお掛けしました。でも、長い人生の中では、早く失敗できたのはいいことだったのかも知れません。リスクに気がつかないまま東証に上場ありきでさらに突っ走っていたら、もっとひどいことになっていたかも知れない。
 だから、この本を書いたのは、僕の失敗体験を多くの起業家に共有してもらえたらと考えたところがありました。