>>「職場いじめの復讐に燃える中年ストーカーの執念」(上)から続きます。
「非管理職のままもう52だよ。ジジイだよ」
復讐を誓うフリーのストーカー作家
内村はプロパー社員の、特に20代の女性社員からは人気があった。キリスト教の教えを職場で真剣に説く姿には、キャリアの浅い無邪気な女性たちの心をつかむものがあったようだ。小堺は、内村にひと泡を吹かせてやりたいという思いを秘めるようになった。
「宗教を持ち出して、善人ぶる。だけど、俺のことをいじめ抜く。常に自分がスポットライトを浴びて、注目を浴びていたいと願っている。ホンネとタテマエを使い分け、ずる賢く生きている」
小堺の目には、内村が「プロパー社員のリーダー格として、よりよき職場をつくるために親会社からの出向組と闘っている」という姿を演じているように映った。「それは、タテマエでしかない。あいつのホンネは、自分中心の体制を守りたい。自分よりも上に上がる奴は認めない、ということにある」と憤る。
小堺は、内村が放送局からの出向組に劣等感を持っていることなどが、狙い目だと考えた。出向組の40代の社員たちに機会あるごとに近づこうとしたが、上手くはいかない。この40代の社員たちは、プロパー社員の間のいじめに関心がないようだった。喫茶店で話し合うとき、わずかにつぶやくほどだった。
「あんな奴がいつまでも仕切っていると、20~30代は育たないだろうな」「なぜ、俺たちと同世代でありながら、あそこまで仕事ができないのかね」
出向組にとっては、やはり大きな問題ではないのだ。小堺は、この頃から会社を辞めようと思い始めた。入社から3年目の頃だった。内村の下に10~20年仕えることは、到底できないと考えた。番組の台本を書くことに特化し、放送作家として生きていこうとした。
6年前に会社を離れ、フリーとなった。今は、数本の番組の仕事を請け負う。収入は、会社を離れた頃の年収にようやく追いついた。
今の楽しみは、フェイスブックを毎日見ることだ。自称「ストーカー作家」にとって、それはもはや「仕事」となっている。もちろん内村の書き込みである。当然「友達」ではない。