昨年夏、オーストラリアのマッコーリー・グループが、日本空港ビルデングの株式の20%弱を保有したことが表面化した。それをきっかけに、海外投資家が、わが国の空港や関連施設企業の株式を保有することを制限する、いわゆる空港外資規制の動きが顕在化している。現在、国土交通省は、空港整備法の改正によって、外資が保有できる株式数を議決権ベースで3分の1未満に制限することを目指している。ただ、そうした外資規制が、今後、わが国への投資資金の流入を妨げることが懸念され、現役閣僚の間にも根強い反対意見がある。

空港関連企業は
官僚の天下り先という事実

 国土交通省は今回の法改正について、外資規制を掛けることによって、安全保障上も重要なわが国の空港施設が海外資本に買い占められるのを防ぐと説明している。また、安全保障上の重要性に加えて、海外投資家は短期的な利益を標榜しやすいため、空港施設の管理やサービスのクオリティーの低下が懸念されると主張している。そうした実例の1つとして、ロンドンのヒースロー空港の株式がスペイン企業に買占められたことによって、サービスの低下などの理由で、最終的に2006年に上場廃止に追い込まれた事実を引き合いに出している。

 ただ、今回の改正案について、もう1つ頭に入れておくべきポイントがある。それは、空港運営会社や施設関連企業は、国土交通省関連の有力な天下り先であることだ。現在のわが国のシステムでは、それらの企業に莫大な利益が落ちる仕組みが存在する。そこに、官僚は目をつけているのだ。これらの企業には、極めて有力な既得権益が存在し、その既得権益に、多くの官僚OBなどが群がっているという状況なのである。

 そうした既得権益層からみると、空港運営会社や施設関連会社に、海外から効率を旨とする経営手法が持ち込まれることは好ましいことではない。海外投資家の取り分が増えるため、官僚OBなどの既得権益の“甘い果実”が減ってしまうからだ。専門家の間では、「今回の空港法改正の本当の狙いは、既得権益層の利益を守ることが目的」との見方もある。わが国の伝統や、過去の事例を考えると、そうした指摘は、“当たらずといえども遠からず”なのだろう。

「閉鎖的な市場」
と言われ続ける日本

 現在、わが国政府は、公式には海外からの投資を歓迎する姿勢を取っている。「2010年までに、対日直接投資残高をGDPの5%と2006年比で倍増する」という具体的な目標も設定している。福田首相は、1月の施政方針やダボス会議の演説の中でも、「対日投資の制度を透明性が高いものにして、対日投資倍増の計画を達成したい」と明言している。