

本来であれば、「従来型業務」の省力化を図り、そこで創出された余力(時間)を業務改革やビジネス戦略に直結する業務に振り向けることが期待されるが、「IT改革」および「業務改革」に分類される項目も、現在と今後の選択率はほぼ横ばいであり、役割が拡大すると期待されている「ビジネス戦略」に関わる項目も、「従来型機能」の減少分を埋め合わせるほどではない。
IT部門の陣容、スキル、意識などさまざまな点において新たな業務を担うには不安があると言わざるを得ないIT部門の現実を表していると言える。もし、IT部門自身が将来の目標を見失っているとすれば、それは役割の縮小よりもむしろ深刻な事態である。
この調査はIT投資に関する意思決定権を持つ人を対象としたものであるが、回答者のすべてがIT部門に所属しているわけではなく、経営者や経営企画部門も含まれている。特に小規模な企業においては、経営者自身や経理・総務部門の責任者、事業部門長などがITに関する判断を下すケースも少なくない。
そこで、前述のIT部門の役割に関する質問のうち、3~5年後にIT部門が担うべき役割についての質問を、IT部門と非IT部門の分けて集計してみた(図2)。まず、全体的に非IT部門(経営者や事業部門長など)の方がIT部門の回答よりも低い比率となっている。すなわち、IT部門自身よりも非IT部門の方が、今後IT部門が担うべき役割を限定的に見ていることを意味する。
役割ごとにみてもいくつかの意識のギャップが見て取れる。「従来型機能」や「IT改革」に属する役割についてはIT部門とその他の回答は概ね同様の傾向を示しており、上位5つに入る役割は一致している。一方で、「業務改革」や「ビジネス戦略」に属する役割については、いくつかの認識のギャップが見られる。
「ホワイトカラーのワークスタイル改革」「ビジネスモデル(ビジネス戦略)の開発・改良」「ビジネスイノベーションの創出」の3つの項目については、IT部門は今後担うべき役割と考えている比率が高いが、非IT部門では他と比べて高くない。IT部門としては、ビジネスモデル変革やイノベーションといった戦略性の高い役割を担っていきたいという意思を示しているものの、一方で経営者や事業部門は、そうした役割を担う部門として、IT部門に対してあまり期待を寄せていないというギャップを読み取ることができる。