子どもが傷つく権利を奪うな!

奥田健次(おくだ・けんじ)
臨床心理士/専門行動療法士/行動コーチングアカデミー代表。常識にとらわれない独自の指導プログラムにより、さまざまな子どもの問題行動を改善させる行動分析学者。数万件以上の難問題を解決してきた手腕から「子育てブラック・ジャック」と呼ばれ、日本各地のみならず世界各国から指導依頼を受ける国際的セラピスト。『NNNドキュメント』『スッキリ!!』では、「今、最も注目されている教育者」として紹介。『あさイチ』他にも出演。著書に、『世界に1つだけの子育ての教科書』『拝啓、アスペルガー先生【マンガ版】』『叱りゼロで「自分からやる子」に育てる本』『メリットの法則』など。

奥田 そのためには子育てのあり方そのものを変えていく必要があります。
 子どもが自分でやったことに対しては、結果はどうであれ、親は手出し無用です。仮に失敗して子どもが傷ついたとしても、現実問題として子どもが自分で背負っていけるなら、子どもの判断に任せればいいでしょう。
 とはいえ、子どもがかわいいあまり、傷つく姿を見たくないと考えている親は結構いるのですが、それではダメです。
 それで私は、「子どもが傷つく権利を奪うな!」と言っているのです。

やました 結局、すべてを「恐れ」という側面から見てしまうから、「断捨離」がなかなか進まないのです。本来、失敗は何事にもつきものですから、まずはそれをじっくり堪能したらいいと思います。本気で悩むことを通じて嫌な気持ちになれば、徐々に切り離せるようになるでしょう。

奥田 そこを乗り越えられれば、その先に何かが待っているはずです。それと、その先に待っているものは何かということを、具体的にイメージできる想像力もほしいですね。何しろ最近は、想像力が欠如している人が非常に多くなっている印象を受けます。
 僕が教鞭を取っている大学で先日、
 「自分が父親や母親になったつもりでレポートを考えてみてください」
 と言ったところ、白紙でレポートを提出してきた学生がいました。
 「なぜ白紙なのか?」と尋ねたら、
 「父親になったことがないから、イメージできません」
 と真顔で言われました。
 いや、それは確かにそうなんだけれども(苦笑)。
 なったことがないから「イメージ」を使うわけですけど(笑)、そういう想像をすることができない子どもが多くなっているという実感があります。月の上に立ったことがなければ、月の上で歩くとどうなるのか想像もつかないんだと、それはなんとつまらないものかと。現代の教育上の課題を突きつけられた気分になりました。