片づけられない人の大半は、
親子関係を引きずっている!

やました 親子関係という点では、他にどんな問題点があるのですか。

奥田 子どもの言いなりになっている親が多いですね。特に、裕福な家庭にありがちです。結局、子どもに言われるがまま「これがほしいから買ってあげる」ということを繰り返しているうちに、子どもの奴隷や召使いになってしまうのです。
 そのまずい関係を早いうちに断ち切らなければなりません。子どもの年齢が10歳になるまでそんなことを続けていたら、まず元に戻すのは不可能に近いと言っていいと思います。いや、子どもは変わるのですが、親のほうがなかなか変わらなくなるからです。できうるならば、4歳未満で相談してもらいたいところです。

やました 「断捨離」でも親子関係が垣間見られるケースがあります。どういうことかと言うと、片づけられない人の大半は、親子関係を引きずっている面があります。自分ではこれがほしいと思っていたのに、母親が、
「あなたにはこちらのほうが大事だから、これを持っていなさい」
 と言われて持ったものを、後生大事に持ち続けている人が非常に多いのです。母親の影響を、どこかで無自覚のうちに受けているからだと思うのですが、その状況から脱するためには、親は親、子は子という認識を新たに持つ必要があります。それができるようになって、徐々に「断捨離」も進むようになるのです。

奥田 「断捨離」というのは、まさに心理学の世界ですね。

やました 私自身も、昔つくったウェディングドレスをずっと持っていたのです。それは、私の親が一生懸命につくってくれたからです。まさに親の意志を引きずっていて、「断捨離」ができないケースの典型例です。
 結局、私は50歳まで引きずっていましたが、ひょっとして親の影響から抜け出すためには、誰でもそのくらいの時間は必要なのかもしれませんね。

奥田 本書の内容や私の提案する「スモールステップの原理」ですが、「断捨離」にもスモールステップがあることなど、共通点がたくさんあって面白かったです。今回はありがとうございました。
(終)

<著者プロフィール>
臨床心理士/専門行動療法士/行動コーチングアカデミー代表。兵庫県西宮市生まれ。
常識にとらわれない独自の指導プログラムにより、さまざまな子どもの問題行動を改善させる行動分析学者。数万件以上の難問題を解決してきた手腕から「子育てブラック・ジャック」と呼ばれ、日本各地のみならず世界各国から指導依頼を受ける国際的セラピスト。年間のべ1000件以上の相談活動を行い、これまでの相談実績は数万件以上。桜花学園大学大学院客員教授など研究者としてのキャリアを経て、2012年に長野県西軽井沢に5000坪の敷地を買い取り、「行動コーチングアカデミー」を設立。発達障害、自閉症、不登校などの問題解決に関わる人材育成を行い、現在、日本初の行動分析学を軸とした私立幼稚園の設立 を準備していることでも注目を浴びている。「日本行動療法学会内山記念賞」(1999年)、「日本教育実践学会研究奨励賞」(2003年)、「日本行動分析学会学会賞(論文賞)」などを受賞。行動科学系の2大学会で初のダブル受賞となる。『NNNドキュメント』『スッキリ!!』(日本テレビ系)では、 「今、最も注目されている教育者」として紹介。『あさイチ』(NHK総合)他にも出演。本書では、子育てにまつわる具体的な『行動の処方せん』を公開。著書にベストセラーとなった『叱りゼロで「自分からやる子」に育てる本』(大和書房)、『メリットの法則――行動分析学・実践編』(集英社)、『拝啓、アスペルガー先生――私の支援記録より』(飛鳥新社)、『自閉症児のための明るい療育相談室――親と教師のための楽しいABA講座』(共著、学苑社)などがある。
【奥田健次オフィシャルブログ】
http://www.diamondblog.jp/kenjiokuda/