「目のつけどころ」を変えて、問題を解決する
前の2作〔『ヤバい経済学』『超ヤバい経済学』〕の根底にあったのは、次の結構単純な考えだった。
まず、〈現代生活はインセンティブのうえに成り立っている〉
インセンティブを正しく理解すること、読み解くことが、問題を理解して解決法を考えるためのカギになる。
〈何を測定すべきか、どうやって測定すべきかがわかれば、世界はそう複雑でなくなる〉
混乱と矛盾に凝り固まった問題を解きほぐす道具として、データほどパワフルなものはない。とくに感情や激論を呼び起こす問題にはてきめんだ。
〈一般通念はたいていまちがっている〉
よく考えもせずに鵜呑みにしていると、悲惨で無駄で危険な結果さえ招きかねない。
〈相関関係と因果関係は別物だ〉
2つのものごとが同時に起こるとき、片方のせいでもう片方が起こるのだと、つい考えてしまう。既婚者が独身者より幸せそうだからって、結婚したら幸せになるって言えるか? そうとはかぎらない。幸せな人はもともと結婚する可能性が高いことが、データからわかる。ある学者の言葉が効いている。「むっつり屋と結婚しようなんて、そんな奇特な人がいると思うかい?」
この本も、基本的には以上と同じ考え方をもとにしているけれど、ひとつちがいがある。
前の2作は「こうしたほうがいい」という規範を示すような本じゃなかった。二人がおもしろいと感じた話をデータを通して伝え、社会の陰に隠れた部分に光を当てるのが目的だった。読者がそういう話を読みたがってくれると思ったからだ。
でもそのうちに、じつはそうじゃないってことに気がついた。むしろ、ぼくたちの普通とはちょっとちがう、フリークみたいな目のつけどころや考え方を通して、いろんな問題を解決したい、と思ってくれる読者が多かったのだ。
だからこの本では陰から一歩踏み出して、暮らしを効率よく過ごすためのちょっとしたヒントがほしい人から、世界的な大改革をめざす人まで、誰にとっても役立ちそうな、考え方についてのヒントを提供できればと思っている。