金融政策は金融機関を通じて行われている
っていうか、どうやって現金の量を増やすの?もしかして、銀行口座にこっそり入れてくれるとか!?
残念ながら、それは違います。金融政策は、誰かの資産を増やす政策ではありません。あくまでも、みんなの手元にある現金を増やす政策です。
同じことでしょ?
いえ、全然違います。同じ100万円分の資産でも、現金・株・債券・不動産、その他いろんなパターンで持つことができます。「手持ちの現金を増やす」というのは、その手持ちの資産を、株や不動産ではなく、現金で持つということです(現金の比率を増やす、ということです)。
また、借金をしたら手持ちの現金が増えますね。いずれ返さなければいけませんが、借りている間は、自分が使えるお金で「現金が増えた」ことになる。金融政策で世の中にある現金を増やそうとする場合、そのやり方は二つあります。
一つは、「金利を操作する」。二つめは、「出回っている現金そのものを増やす」です。順番に解説しましょう。まず「金利を操作する」です。
金利をどうやって変えるの?
かつては、「公定歩合」という日銀が決める“オフィシャルな金利”があり、それを変えることで、世の中の金利を操作していました。
この公定歩合は、日銀が一般の銀行にお金を貸し出すときの金利です。民間の銀行は預金者からだけでなく、日銀からもお金を借りてビジネスをしているのですが、日銀から高い金利でお金を借りなければいけないときは、銀行もそのまま高い金利で世の中の企業や個人にお金を貸し出さなければいけません。
そうすると、どうなるの?
公定歩合が上がると、世の中の企業や個人がお金を借りづらくなります。とすると、みんなが現金を手にできなくなるということで、出回っているお金が減ることになります。つまり、みんなの手持ちの現金が減るんです。
公定歩合を上げると、世の中の現金の量が減るんです。反対に、日銀が安く貸してくれれば、銀行も安く貸し出せます。その結果、みんなの手持ちの現金が増えていきます。
かつては、日銀はこの公定歩合を変えることで、世の中の金利を操作し、世の中の現金の量を変えてきました。公定歩合が世の中の金利の基準になっていたわけです。
「かつては」ってことは、今は違うの?
そうなんです。1996年に金融ビッグバンが起こって自由化が進み、各銀行が自由に預金金利・貸出金利を設定できるようになりました。そのため、日銀が直接操作することができなくなりました。
ただ、直接は操作できなくても、まだ間接的に操作できます。日銀は、金融機関同士がお金の貸し借りをするときの金利を変えるように働きかけています。ちなみに「無担保コール翌日物金利」という名前です。名前は覚えなくていいですが。
なんか難しそうな名前だね……。
これはA銀行がB銀行から「今日お金を借りて、明日返す」というときに適応される金利です。
1日で返すの?1日しか借りなくて、何が買えるんだろうなぁ。
銀行が「1日だけ」お金を借りるのは、何かを買いたいからではありません。金融機関は日銀に決まった額のお金を預金しておかなければいけません。それを「法定準備預金」といいます。日銀に預けておかなければいけない金額ですが、日々企業に融資をしていたりすると、この法定準備金が足りなくなることがあるんです。
でも、このお金が足りなくなると、大変です。だから他のB銀行から「ごめん、1日だけ貸して!」と言ってお金を借りるんです。そのときの金利がこの「無担保コール翌日物金利」で、日銀は公定歩合の代わりに、これを変化させるように働きかけています。
これでも同じことができるの?
公定歩合のように直接的な操作はできませんが、間接的にはできます。
なるほどね。で、二つめの作戦もあったよね。