それが「出回っている現金そのものを増やす政策」ですね。日銀が「金利を通じて」ではなく、「直接的に」世の中の現金を増やす作戦があります。それが「公開市場操作」といわれるものです。

 どういうことか説明しますね。日銀は銀行が持っている「国債」を買うんです。国債とは、国(政府)が発行する債券のことです。そして、銀行は国債を売って代金を現金で受け取ります。となると、銀行が持っている資産の金額は変わりませんが、持っている現金の量が増えますね。それが大事なんです。

 日銀はいくらで買うの?

 今の段階で、それは気にしないでください。ここで大事なのは、「銀行がこれまで持っていた国債の代わりに、現金を手にする」ということです。

 うん。それで?

 金融機関(たとえば銀行)は、手持ちの現金を企業や個人に貸す仕事をしています。ということは、その「手持ちの現金」が増えれば、貸し出せるお金が多くなりますね。その結果、融資を受けられる人が増えます。企業は新しいビジネスができるようになり、個人はローンが組みやすくなって、家や車を買えるようになります。日銀が行う「世の中のお金を増やす政策」を「金融緩和政策」といいます。

 なんで、銀行の手持ち現金が増えると、多く貸し出すようになるの?

 それは、銀行のビジネスが「資産を運用すること」だからです。銀行は預金者からお金を預かって、それを運用するビジネスをしています。集めたお金を金庫に置いておくだけでは儲かりません。運用しなければいけないんです。必要以上の現金を持っておくことは、仕事をしていないということにもなってしまいます。

 だから銀行は、手元にある現金が増えすぎることを嫌がります。「大変だ!もっと貸し出さなきゃ!」と感じて、融資先を探すようになるわけです。その結果、より多くの人がお金を借り、ビジネスを始めたり、モノを買ったりします。これで景気が良くなるんですね。これが「金融緩和政策」です。アベノミクスでもこれが行われました。

 金融緩和政策の逆パターンもあるの?

 はい、あります。それが「金融引き締め政策」です。単純に言うと、「世の中のお金を減らす政策」です。やり方は、さきほどと逆で、銀行に国債を売ります。そうすると、銀行は手元にあった現金が国債に代わるので、貸し出せなくなりますね。

 そうすると、ローンを組みたい個人や融資を受けたい企業にお金が行き渡らなくなります。「商品を買いたくてもキャッシュがなくて買えない!」という状態になります。需要はあっても実際に商品を買うことができなければ取引は成立しません。「買いたくても買えない状態」になるんですね。だから、日銀が銀行に国債を売ると、世の中の商売が下火になり、景気が悪くなっていくんです。

 次回は、景気対策の二つめ、「財政政策」について解説します。(第3回へ続く)