深夜1時、繁華街にあるペットショップにはいつも人だかりができている。市場規模1兆円、日本のペットブームはいまだ衰えを知らない。だがその陰で、ペットの命が脅かされる現実も広がっている。

 捨てられたペットの保護活動を続けてきた静岡県の女性は、猫を引き取りたいという男にとんでもない目にあわされたという。譲り渡した猫が虐待されたのだ。男は30代の会社員。妻と2人の子供を持ちながら、動物虐待に手を染めていた。

虐待、飼育放棄、手数料ほしさに捨て犬を引き取るケースも。身勝手な飼い主が生む「ペットの悲劇」
自治体の動物愛護センターに持ち込まれるペットたち。殺処分される数は年間およそ30万匹にのぼるという。

 一方、飼い主によって自治体の処分施設に持ち込まれるペットも後を絶たない。殺処分される犬や猫は年間およそ30万匹。飼い主を思いとどまらせるのは難しく、「大量処分」の現状が続いている。

 人間の身勝手な都合によって命を弄ばれるペットたちの悲劇。いったいその背景には何があるのだろうか――。

ペットをモノのように扱う、
悪意ある飼い主も・・・

虐待、飼育放棄、手数料ほしさに捨て犬を引き取るケースも。身勝手な飼い主が生む「ペットの悲劇」
虐待を受けた猫。飼育放棄だけでなく、虐待に手を染める悪意ある飼い主もいる。

 神戸にある動物愛護団体では、ペットの虐待に関する情報を収集している。虐待が疑われる飼い主のリストを作成し、犬や猫を譲り渡さないよう、各地の愛護団体に呼び掛けている。だが、なかなか被害は無くならないという。

 いまネット上では、ペットを手放さざるをえない飼い主達が、掲示板を使って引き取り手を募集している。こうした掲示板は、新たな飼い主を幅広く探せるメリットがある一方、悪意のある引き取り手が紛れ込んでしまいやすいのだ。

 去年秋、大阪にインターネットの掲示板を使って子猫を集めては次々に捨てる飼い主がいるとの情報が、取材班にもたらされた。

 動物保護のボランティア、山中美子(やまなか・よしこ)さんは、ブログをチェックしていたところ、近所の男性の記述に不審を抱いた。掲示板で手に入れた子猫達の様子を公開しているのだが、1ヵ月もたつと、様々な理由で子猫たちがブログ上から姿を消してしまうのだ。その数は、2年間で30匹。山中さんは、男性は子猫にすぐ飽きてしまい捨てていると疑いを強めていた。

 ペットの飼育を放棄して捨てる行為は、動物愛護法で禁じられており、最高で50万円の罰金が科せられる。山中さんは、男性に子猫を譲り渡した人たちと連絡を取り、ついに男性の居場所を突き止めた。ボランティア仲間と一緒に訪問し、真相を問いただすことにした。2時間に及ぶ追及の末、男性はついに猫を置き去りにしたことを告白。山中さんはその全てを引き渡させた上で、二度と猫を集めないことを書面で誓約させた。

 栃木県には、刑事告発された飼い主も存在する。告発した愛護団体に話を聞くと、この飼い主は、ペットを飼えなくなった人たちから大事に面倒をみるというふれこみで、ペットを引き取っていたという。餌や予防接種の代金などと称して3万円から最大30万円の手数料を徴収。ところが、人気のある犬は転売していたとみられている。そればかりか、売れない犬や猫は世話をせずに放置し、衰弱死させた疑いがもたれている。近所の人達は、犬や猫が餌を満足に与えられず、弱っていく様子を度々目の当たりにしたという。