告発された内容は事実なのか。取材班は、自宅に戻ってきた問題の男性に直接取材を申し込むことにした。しかし、男性は「現在、ペットの引き取りはやめている」と繰り返すばかりであった。現在、警察では、この男性の立件に向けて捜査が続いている。

日本人の「子犬志向」が生む
さらなる悲劇

 ペットの悲劇は「虐待」だけではない。大量放棄が生み出す「殺処分」も大きな問題になっている。

飼い主を説得する動物愛護センターの職員。「殺処分」をゼロにするための努力を日々行なっている。

 熊本市の動物愛護センターには、犬を手放したいという相談が毎日のように寄せられている。センターでは、こうした電話に対して思いとどまるよう説得するなど、「殺処分」をゼロにするための活動に力を入れてきた。努力が実を結び、殺処分の数は10年前の10分の1にまで減っている。だが、それでも、飼い主から持ち込まれる犬は後を絶たず収容能力は限界に近いという。犬を持ち込む理由で最も多いのが、噛み癖や吠え癖などの問題行動だ。

 8ヵ月前、暴れる飼い犬に悩まされ、センターに相談を寄せてきたという飼い主を訪ねることにした。鶴田憲平(つるた・けんぺい)さんは、飼い犬の度重なる問題行動に長年手を焼いてきた。大けがを負ったこともある。センターからドッグトレーナーを紹介してもらいシツケに取り組んでいるが、問題行動を完全に直すのは難しいと言われている。その原因は、子犬の頃の育ち方にあるという。

 日本では多くの犬が生後間もなく親や兄弟から引き離されるため、社会性が身につかず、わがままになりやすいのだ。多くの犬が生後間もなく母犬から引き離される背景には、消費者の極端な「子犬志向」がある。最新のデータでは、ペットショップで販売された犬のうち、9割以上が生後2ヵ月以内となっている。

日本人は「子犬」好き。それが、さらなる「悲劇の連鎖」を生んでいるといえる。

 また、子犬志向にはもう1つの問題がある。愛護センターでは、収容犬をしつけ直し、新たな飼い主を募集しているが、大きくなった成犬には引き取り手がなかなか現れないのだ。

 推定5才のイノキは、半年前、街をふらついているところを保護された。当初は職員の言うことを聞かず「お座り」もできなかったが、いまでは「伏せ」や「待て」も難なくこなす。しかし、引き取りを希望する飼い主はまだいない。去年11月、保護された犬を一同に集めて「譲渡会」が開かれたが、人気は子犬に集中、成犬に関心を示す人は少なかった。イノキに至っては、見向きもされなかった。子犬を好む人が多い日本。その志向が、不幸なペットを増やし続けている。

動物愛護先進国
ドイツから学ぶこと

 どうすれば「子犬志向」を改め、ペットの大量処分を防ぐことができるのか。動物愛護の先進国・ドイツの取り組みを取材した。犬猫あわせて1300万匹が飼われているドイツでは、行政が犬や猫を殺す「殺処分」は一切行われていない。まず、街の中心部にあるペットショップを訪ねた。熱帯魚や犬の首輪は売られているが、衝動買いを誘うケースに入れられた子犬の姿は、どこにもない。店主によれば、「ペットショップで犬を販売することは規則で禁じられている」という。