「小さいのに、便利で楽しい。トルクも太いし、乗り心地もいいし、ボディも好みのものが選べるニッポンの軽自動車。多士済済。1950年代に誕生してからすでに半世紀以上。数々の逆境を乗り越えて進化した。世界に例を見ない、日本独自のジャンル。改めてその栄誉を称えたい」

 これは、主催者RJCの表彰理由である。

「ようやく軽自動車が誉められた」
鈴木修会長のかつてない歓喜

 これを最も喜んだのが、スズキの鈴木修・会長兼社長である。齢(よわい)84歳を迎えたこの自動車業界現役最長老経営者は、「ミスター軽自動車」とも呼ばれる。彼は筆者にこう語った。

「排ガス規制対応で危機に陥ったり、政府機関が軽自動車をなくせと提言したり、苦しいときに軽自動車を何とかしたいとやってきた。軽規格という制限の中でここまで成長させたのは、軽自動車各社の技術陣の努力の賜物。私もスズキ入社以来、50年軽自動車と共に生きてきたが、ようやく軽自動車が誉められた」

 筆者も鈴木修会長とは40年近くの付き合いだが、これほど感慨深く嬉しそうに語ったのは、極めて稀なことである。

 軽自動車は、日本のモータリゼーションの黎明期の1950年代に国が提唱した「国民車構想」に端を発する。排気量規格は当初の300ccから、360cc→550cc→現在の660cc以下と変遷し、ボディサイズも現在の全長3.40m以下、全幅1.48m以下、全高2m以下へと規格変更され、道路運送車両法でその枠が制約されている。

 過去、排ガス規制、安全問題、登録車の大衆車クラスの台頭などから、その存在が危機的状況となった時期もあった。また、軽自動車は「がまん車」と呼ばれ、「走ればいい」と揶揄された時代もあった。

 しかし、制約された規格の枠内で軽自動車メーカー技術陣が工夫をこらし、開発や小さいクルマづくりの合理的生産手法をものにする切磋琢磨が実を結んできたのである。今や、軽自動車のバリエーションはセダン系からハイト(背高)系、SUV、スポーツカーまでまさに多士済々だ。もちろん地味だが、トラック、ワンボックスバンの軽貨物車も農業・漁業や配送用として、堅調な市場動向を示す。

 次世代車として多様なエコカーが出現する中で、軽自動車のガソリン車の燃費改善・向上への動きは、30km/L超競争の時代に入っている。昨年末にスズキが発売した8代目の新型アルトは、ガソリン車ナンバーワンの低燃費37.0km/Lを実現した。また、軽自動車にも先進安全技術が搭載されるなど、性能、品質、走り、デザインが大きく進化している。かつての「軽がまん車」のイメージは、完全に一掃された。