4月半ば、浜田宏一・内閣官房参与がテレビ番組で「購買力平価からすると、1ドル120円はかなり円安、105円くらいが妥当」と発言したことで、為替市場は大きく揺らいだ。この発言は海外にも即座に伝わり、ドル売りが加速。相場は一時円高ドル安方向に巻き戻し、先行きでも“行き過ぎた円安”が修正されるのでは、との観測が強まる形となった。浜田参与の見方は正しいのか。そもそも、購買力平価とは何を意味するのか。(ブラウン・ブラザーズ・ハリマン通貨ストラテジスト 村田雅志)
浜田参与が持ち出した
「購買力平価」とは何か
安倍首相の経済ブレーンとされる浜田宏一・内閣官房参与(米エール大名誉教授)が、「購買力平価からするとドル円は105円くらいが妥当」との見方を示したことで、「購買力平価」に対する注目が集まっているようだ。これは、為替レートの適正水準を求める考え方の一つである。
購買力平価とは、同じものであれば、どの国であっても同じ値段で売られるはずだ、という「一物一価」の考え方に基づいて為替レートの適正水準を探る方法である。たとえば、スマホやタブレットといった製品は、どこの国で販売されていても、同じ機種であれば(言語の部分を除けば)同じ性能を持つと考えられ、同じ性能を持ち、かつ同じタイミングで販売されるのであれば、どこの国であっても販売価格も同じであろうと考えられる。
世界中で大ヒットしているスマホが日本と米国で売られているとしよう。そして、このスマホは、日本では5万円、米国では500ドルで、それぞれ売られているとする。ここで一物一価が成り立つのであれば、
5万円=500ドル
となり、計算すると、円とドルの関係は、
100円=1ドル
となる。
ここでスマホの価格が変わった場合を考えてみよう。日本のスマホの価格は変わらないのに、米国のスマホの価格は1年後に550ドルに上がったとする。一物一価が成り立つのであれば、
5万円=550ドル
となり、円とドルの関係は、
90.9円=1ドル
もしくは
100円=1.10ドル
となる。
1年前は、100円=1ドルだった円とドルの関係は、米国だけスマホの価格が上がった1年後には、90.9円=1ドルに変わった。つまりドル安・円高が進んだことになる。