なぜ管理職比率に注目するのか

 そうは言ってもそれは計算上の予測であって、女性が職場に増え様々な意思決定に参加することに、本当に良いことなんかあるのか――。そんな疑問をお持ちの方もいるかもしれませんね。2012年10月に経済同友会が出した「2020年までに女性役員の登用も視野に入れ『女性管理職30%以上』の目標を企業が率先し達成するために努力する」という経営者の行動宣言の背景には一体何があるのか。筆者は以下のように考えています。

 皆さん。現在、様々なものの消費の意思決定をしているのは男性か女性か、その割合はどれくらいか、イメージできるでしょうか。ボストン・コンサルティング・グループが2008年に世界40ヵ国で行ったグローバル・サーベイによれば、世界の消費の少なくとも64%以上が女性によるもの、及び女性の意思の影響を受けたものであることが判明しています。また、その女性による世界の消費の規模は、2008年当時で約2000兆円、数年後には2800兆円に拡大するであろうことも予測されています。なかなか侮れない数値ですね。日本にも同様の調査結果があります。平成24年の男女共同参画会議・基本問題・影響調査専門調査会の報告書によれば、家庭における日常的な買い物の意思決定権は約74%が妻にあり、更に自動車などの耐久消費財でも、妻が意思決定にかかわるケースが76.8%に上ることが分かっています。

 消費の意思決定のほぼ7割が女性によってなされるものだとすると、企業はどうすればより売上を拡大できそうでしょう。当然、購買意思決定者のニーズや動向を良く理解し、それに見合った商品やサービスを開発し、効果的に意思決定者にリーチすることが求められますね。では誰に中心的な役割を任せたら、よりうまく行きそうでしょう?それは当然、購買意思決定者に近い層、つまり女性ということになるでしょう。

 こうした現状をうまく捉えている事例をご紹介しましょう。日産より2012年9月に発売された新型車「ノート」です。ノートは発売当時、国内登録車販売ランキングで3位、発売5ヵ月の販売は前年同期比3倍のヒット商品となりました。このヒットを生んだ責任者は、企画から投入までを統括するチーフ・プロダクト・スペシャリストである、40代の女性だったのです。力の強くない人でもトランクやドアの開閉操作が楽にできるなど、女性目線での工夫が随所に見られました。他にも、パナソニックの「ナノケア」シリーズ、サントリーの「のんある気分」など、最近のヒット商品の企画開発は、女性を中核とするチームにより主導されていることが少なくないのです。

 別の事例もご紹介しましょう。今ではかなり普及してきた、エキナカビジネス。その先駆となったのは、2005年にJR東日本の大宮駅にオープンした「ecute大宮」でした。90年代に入り鉄道の利用客は減少、運輸収入も減少傾向にあったJRが次の一手を求めて開始したのがこの事業です。この企画のリーダーを務め、後にJR東日本ステーションリテイリングの2代目社長に就任したのは、平成元年入社の女性社員でした。

 当時ステーションルネッサンスと銘打ったコンセプトは「通過する駅から集う駅へ」。しかしそれを実現させるためには、従来のJRには無い発想が必要だったのです。そこで、百貨店への出向経験もある若い女性の発想や感覚が、組織に新たなアプローチを生みだしていくことになったのです。

 このように、閉塞感の漂うビジネス界において、プロダクトイノベーションやプロセスイノベーションが進む現場に、指導的立場の女性人材が存在していることを少しお感じいただけたでしょうか。