アメリカ経済を牽引しているのは新しい産業であると前回述べた。今回は、個別企業の観点から、この状況を見よう。

IT関連先端企業が
アメリカをリードする

図表1に示すのは、アメリカの時価総額トップ4社である。

 原油価格低下によりエクソンモービルの時価総額が減少し、アップルが時価総額で全米1位(世界1位)の企業となった。

 グーグル、マイクロソフト、エクソンモービルの時価総額がほぼ同程度で、アップルがその2倍程度になっている。

 このように、アメリカ経済の時価総額リストでは、IT関係の企業がトップを占めることになった。これは、現代のアメリカ経済を象徴している。

 売上高に対する税引き前利益の比率は、エクソンモービルでは13.1%であるのに、アップル、グーグル、マイクロソフトでは、その2倍以上になっている。このような高収益性が実現されているのは、これらの企業が先端的な技術や新しい製品を開発したからだ。

 時価総額の利益に対する比率を見ると、エクソンモービルが7.2であるのに対して、アップル、グーグル、マイクロソフトでは、その2倍以上だ。とくにグーグルの値が高い。

 この値は、将来利益がどれだけ成長するかを示している。値が高いのは、将来の利益が現在の利益に比べて増大すると予想されていることを意味する。したがって、エクソンは将来の利益が現在の利益より大きく伸びるとは考えられていないのに対して、グーグルの成長可能性は極めて高く評価されていることになる。アメリカの成長産業がエクソンのような伝統的企業ではなく、新しい技術や商品を開発した企業であることが、これから分かる。

 アップルの売上高がエクソンモービルのほぼ半分しかないのに時価総額が2倍になるのは、売上高に対する利益の比率が高く、しかも利益が将来増加すると予想されているからである。

 なお、アップル、グーグル、マイクロソフトのような企業の利益は、為替レートによってあまり影響されない。「ドル高でアメリカ経済が苦しくなる」という意見があるが、それはいまから30年前のプラザ合意のときのことだ。そのときには、アメリカの産業の中心は自動車産業であり、ドル高による日本車の輸入増加で苦しめられた。