個人の自由選択が実現していない
介護サービス

 介護保険制度が始まって、この4月で16年目に入りすっかり定着した。65歳以上の高齢者が4人に1人とその割合は高まり、介護保険利用者はますます増えていく。

 本人の自由な選択で介護サービスを選び、事業者と「契約」を結んでサービスを利用できるようにしたのが介護保険。国や自治体が一方的に決めていた「措置」時代の介護サービスの仕組みを全面的に見直した。本人の要介護状態に応じて介護サービスが提供される。原則として、家族構成や本人と家族の資産などは勘案されなくなった。あくまで本人本位である。

「措置」から「契約」への転換と言われた。契約は、本人の自由な選択に基づいた結果である。介護サービスの原資を、税でなく保険に替えたことで実現した。税である限り、強制力を伴う行政措置が発揮される。

 介護保険の理念には、「自己選択」「自己決定」それに「利用者本位」というこれまでの日本の社会保障にない「個人」を最優先させる考え方が組み込まれていた。

 そして、今、果たして自由な選択が実現しているだろうか。違う。在宅サービスの選択は本人でなく、ケアマネジャー(介護支援専門員)の判断に委ねられている。ケアマネジャーが作るケアプランでサービス内容やその事業所が決められてしまう。本人の自由な選択はどこへ行ったのか。

「全国マイケアプラン・ネットワーク」が主催した、一般市民向けのワークショップ。3月21日に東京・杉並で「丸投げしない老後の暮らし方」というテーマで開いた

 実は、制度をよく調べると、ケアプランを高齢者自身が作ってもいいとある。ケアマネジャーに頼まなくても、本人と同居家族が一緒になってケアプランを作ることができる。

 ケアマネジャーがケアプランを作ると、軽度者なら約1万円、中重度者では約1万3000円の収入になる。自己作成だと収入にならない。財源面では制度に貢献することになる。

 ケアプランを自分で作るということは、サービスの種類やその提供事業所を自由に選択できることでもある。自己選択、自己決定の世界を自身で作り出すことができる。介護保険の精神の体現者となる。

 実際に、ケアプランを自己作成している高齢者がいる。