さらに、IoT向けに新たな規格を広めようという動きが活発化してきた。例えば、ドイツが提唱するIP500は、アドホック通信(無線ルーターなどを介さない直接通信)に対応したIoT端末同士が通信してメッシュネットワークを形成するところに特徴があり、相互接続性やセキュリティを担保したままエネルギー効率がいいことを謳っている。同様に、京都のベンチャー企業のコネクトフリーも、分散型メッシュネットワークを標榜しており、この規格のチップを台湾のファンドリーで生産すると発表している(詳細は非公表)。

 そして、3つめの半導体分野はIoT機器の「コントロール」を司るMPUだ。世界のモバイル機器のMPUでリードするARMだが、IoT分野では、インテルのIoT部隊がセキュリティ技術やファームウェアの充実をテコに業績を伸ばしている。

 インテルが去年の暮れに発表した“Intel IoT Platform”では、ハード、ソフト、それにユーザーとのパートナーシップにより顧客の迅速なシステムデザインを目指している。IoTチップはありとあらゆる環境に偏在することから、多くの新興企業の新しい技術とも連携してネットワークのエッジでセンサーなどからのデータ処理を行う。

 このように、今までの開発資産を利用できる既存のチップメーカーがIoT分野で今後も中心的役割を果たすと考えられるが、環境や用途が多種多様なIoT分野では、様々な新技術や新興企業の興隆が期待される。

 例えば、Adesto Technologies(アデスト・テクノロジーズ)は、消費電力が従来の100分の1で、ガンマ線や電子線に耐えられるメモリーチップを開発した。電子線で消毒される手術道具でもこのチップを埋め込んでIoT型手術機器が開発可能となる。

 バッテリーの不要なセンサーチップの開発も進んでいる。Spansion(スパンション)のチップは、光(ソーラー発電)、振動(ピエゾ効果)、熱変動(ペルチエ効果)などからエネルギーを吸収してセンサーが自家発電を行う。この「自家発電(Energy Harvesting)」技術により、10~30年に及び充電が不要になるという。

 MCU(マイクロコントローラーユニット)メーカーのAtmel(アトメル)は、超低消費電力のMCUを開発した。一番小さなARMコアプロセッサーを使い、回路の区域別に電力消費を管理することにより、通常の低消費電力チップの4分の1程度の消費電力に抑えることができたという。このチップと使えば1つのバッテリーで10年動作がもつとされる。

 IoTは広範な分野に広がるので、IoTの半導体チップは用途に応じた品揃えが重要となる。例えば、韓国のサムスン電子が発表したSamsung Artikシリーズのチップは、末端デバイスのセンサー駆動モジュールからホームサーバー向けのフルサイズMCUまで、多種多様な品揃えを誇っている。IoT開発者は同じ設計プラットフォームで開発でき、しかも相互動作が確認されているので、一旦ユーザーになると他のプラットフォームへのスイッチが難しくなりユーザーの囲い込みが期待できる。

 半導体は専門家以外にとっては分かりにくい分野だ。しかし、IoT時代の製品開発では、半導体の中身の作り方よりも性能や特徴の理解が鍵となるので恐れることはない。逆に、半導体メーカーは、半導体に詳しくない人でもストレスなく設計できる全体ソリューション型の価値提供が重要となるであろう。