>>(上)より続く
法律を作って規制するのは
最悪の結果になりかねない
街中に監視網を張り巡らせ、ドローンを飛ばそうとしている瞬間を押さえ、摘発に至るまでの警察の監視コストは甚大になります。それだけのコストをかけても、世の中の膨大なドローン利用をリアルタイムで網羅的に把握することは困難ですから、違反が発見される確率は極めて低く、違法状態が放置されることになります。
仮に罰則を科したとしても、我が国の法体系はインサイダー取引等を除くと巨額の罰金は課されないので、一罰百戒で違反を抑止することも難しく、確信犯的な人物が軽犯罪の感覚で再犯し続ける恐れも大いにあります。結局は、ドローンを使う人のモラル次第ということになります。
遵法精神のない者はルールを破り続ける一方で、遵法精神に富んだ者はルールを守ります。新たに規制法を作っても、結局のところ、悪者はルールを破り続け、正直者と善人だけがドローン利用をやめることになってしまいます。ドローンの悪用はなくならず、ドローンの有効利用だけがなくなってしまうという最悪の結果になってしまいます。「角を矯めて牛を殺す」典型的パターンに陥りかねません。
とはいえ、悪用に対する対策はしなければなりません。
まず、3つのアプローチでいう「ルール」ですが、現行法でも十分取り締まれますし、現に、現行法規に基づいて逮捕されています。ドローンを悪用して相手先の業務に支障をきたせば威力業務妨害罪、拙い操縦で墜落させて歩行者に怪我をさせれば過失致傷罪、モノを壊せば器物損壊罪、許可なく敷地に入れば、住居不法侵入罪に問われます。さらに、民法に基づき、不法行為による損害賠償責任は発生します。
現行のルールで、何か足らないことがあるのでしょうか? もちろん、皆無とは言い切れませんが、大きな法規上の欠陥や欠損があるとは思えません。それを、反射的に、新たな規制が必要だと思ってしまい、それで問題が解決されると思ってしまうのが、思考停止。ルール作りが必要な場合も、国の立法に頼むのではなく、まずは、当事者が速やかに自主ルールを作って対応することが重要です。それでもダメだったときに、国の立法という手順を踏むべきです。