技術が進化するほど、「感性」が勝負になる

森川亮(もりかわ・あきら)1967年生まれ。筑波大学卒業後、日本テレビ放送網に入社。コンピュータシステム部門に配属され、多数の新規事業立ち上げに携わる。2000年にソニー入社。ブロードバンド事業を展開するジョイントベンチャーを成功に導く。03年にハンゲーム・ジャパン(株)(現LINE(株))入社。07年に同社の代表取締役社長に就任。15年3月にLINE(株)代表取締役社長を退任し、顧問に就任。同年4月、動画メディアを運営するC Channel(株)を設立、代表取締役に就任。著書に『シンプルに考える』(ダイヤモンド社)がある。(写真・榊智朗)

堀江 でも、動画の編集やコンテンツづくりって、まだ簡単にできるようにはなっていませんよね。僕も動画を撮ることは多いけれど、編集ができない。若い人にとって、動画編集ってどうなの?

——「手軽」と言われているiMovieですら、ハードルは高いです。取り込んだり調整したり、難しいですね。

堀江 そうでしょ。こんなに普及しているYouTubeでさえ、気軽に編集できるアプリってないんですよね?

森川 YouTubeでいえば、ようやく自分で編集できるようなアプリが出てきました。でも、それはストーリーを意識した「本筋の編集」ではなくて、動画に文字をかぶせたりといった「お絵かき的な編集」です。

堀江 もうちょっと手軽にできれば、と思うんですけど……。

森川 ですから、ストーリーをつくるための、いわゆる本筋の編集が手軽にできるアプリをつくろうと考えていますよ。撮影した動画をその場で編集できたら、より早いアップが可能になりますしね。

堀江 おお。誰でも簡単に動画編集ができるアプリが、ついに。

森川 だから、そのアプリではなるべくフォーマットを決めようと思っています。意外に思われるんですが、エンターテインメントにもフォーマットってあるんですよ。水戸黄門が印籠を出すタイミングがいい例です。

——43分ごろ、ですよね。

森川 ええ。そういう肝となる部分を決めてしまえば、ある程度クリエイティブな部分も簡素化できるはずです。

堀江 いやあ、そこはぜひやってほしいですね。

森川 コストを抑えていいものがつくれれば、業界構造が大きく変わります。職人じゃないとつくれなかったものが、一般の人もつくれるようになるから。そうしたら、あとは「感性」の世界になるんです。技術じゃなく、感性勝負に。

堀江 ああ、ウェブデザインもそうなりましたよね。以前はプログラミングの知識が必要だったから「デザインそのもの」としては評価されづらかった。それが、技術に詳しくなくてもデザイナーであれば参入できるようになって、実際、レベルも上がりました。

森川 機械が人間の感性以外の部分を担ってくれることで、かえって人間らしい表現ができるようになるとも言えますね。

堀江 ドローンも同じでしょう。ラジコンヘリなんて昔からあったけれど、姿勢を保たせるための制御が難しかった。その制御の部分を機械で済ませられるようになったから誰でも操作できるようになって、「どう使うか」の話になっているわけで。

森川 はい、はい。まさにそうですね。

堀江 これと同じことが、動画で起こるんじゃないかな。いや、動画だけじゃなくて、コンテンツすべてに言えることかもしれません。

森川 そうですね。僕は、まずは動画ファッション雑誌の分野でそこを目指していきたいと思います。堀江さんともいつかお仕事でご一緒したいですね。

堀江 あ、そうだ、C CHANNELとコラボしたい案件があるんですよ。僕がプロデュースしているグルメキュレーションサービス「TERIYAKI」なんですが……ちょっとまた別途、話しましょう(笑)。

森川 ぜひ、ぜひ。

堀江 今日はありがとうございました!

<完>