>>日の丸IoTの成否(1)から続く

アナログからデジタルへのシフトは、モノづくりのあり方を変えてしまった

「モノのインターネット」であるIoT。日本はそこで世界をリードできるのか──。前回は、IoTの本質の一つとして、機器がネットワークにつながることで「進化する機器」と化し、ユーザーのニーズに合わせて新機能が追加されるようになることを述べた。そして、「進化する機器」が実現した背景には、「損して得とれ」の哲学に基づく「オープン・イノベーション」戦略があったことを指摘した。

 今回はインテル、マイクロソフト、アップル、グーグル、クアルコムなどの米国企業の事例を挙げながら、彼らがなぜ「オープン・イノベーション」戦略を取らざるを得なかったかを解説する。

 その上で、なぜ日本企業が同じ戦略を取れなかったのかを述べたい。

アップルやグーグル、クアルコムも
実践しているオープン・イノベーション戦略

 パソコンにおいて、マイクロソフトやインテルがオープン・イノベーション戦略を実践し、それによって「ウィンテル」を標準にしたことを前回述べた。

 同じことはスマートフォンでも行われている。

 アップルは、アプリ開発に必要となる開発ツールを提供することで、アップル以外の企業がiPhoneやiPadのアプリを開発できる環境を構築している。同様にケースについても、アップル以外の企業が容易に開発できるよう、寸法図面や設計のガイドラインなどを提供している。

 グーグルのスマートフォン・タブレット用OSであるAndroidの場合でも、同じようにアプリ開発に必要となる開発ツールが提供されている(図1参照)。

 また、Androidスマートフォンの多くにはクアルコムの通信チップが使われているが、中国などの新興企業でもスマートフォンが開発できるよう様々な開発ツールが提供されている。

 要するに、アップルの場合は自社のスマートフォンやタブレット、グーグルの場合はスマートフォンやタブレット向けのOSであるAndroid、クアルコムの場合は自社製の通信チップ、というように自社の製品が「標準」となるよう「損して得とれ」を実践しているのだ。

図1