本コラムの第95回で、来年度から紹介状なしで大病院を受診した場合に、特別料金の加算が義務化されることを紹介した。

 だが、医療費の国民負担増はそれだけでは収まらない。

 5月に成立した改正医療保険関連法では、入院時の食事代も、2016年~2018年にかけて段階的に引き上げられることが決められているからだ。

2016~2018年にかけて
段階的に食事代を引き上げ

 入院時の食事代は、今では患者負担があるのが当たり前のように思われている。だが、1990年代はじめまでは、入院中の食事代も、検査や手術、室料などと同様に、「療養の給付」として健康保険から給付されていた。

 しかし、1994年10月に療養の給付から食事代が切り離され、医療費とは別に入院時の食事代に患者の一部負担が導入されることになる。

 理由は「在宅療養をしている人との公平を図る」というもの。「同じ病気でも、自宅で療養している人は食費を自分で負担しているのだから、入院中の人からも食事代をとるべき」という意見が出され、今に続く「入院時食事療養費」が創設されることになったのだ。

 だが、入院中の食事は患者の病状に合わせて、栄養管理されたものが病院から提供されている。治療の一環でもあるので、患者の全額自己負担ではない。現在は、病院食1食あたり640円の基準額のうち、260円を患者が負担し、残りの380円が健康保険から給付されている。

 入院時食事療養費は、総務省の「家計調査」などから平均的な家計の食材費、調理にかかる光熱費などに相当するものが自己負担額として決められたようだ。このとき、医療費ではなく生活コストの一部と位置づけられため、高額療養費の対象からも外されることになった。

 導入当初、一般的な収入の人の自己負担額は1日(3食)あたり600円。それが、1996年10月に760円、2001年1月に780円とジワジワと引き上げられてきた。そして、2006年4月に1食ずつ計算する方法に見直されて、現在の1食260円(1日3食だと780円)に至っている。

 国は、この患者負担を、2016年から1食あたり100円引き上げて360円に、2018年には460円に引き上げる予定だ。