動き出した国会図書館

 連載第5回以降とりあげてきた、国会図書館長尾構想について、8月6日付け日経本紙が「国会図書館の本 有料ネット配信」「著作権管理へ新法人」という記事を掲載しました。その内容は、来春にも、国会図書館、日本文芸家協会、日本書籍出版協会が共同して、デジタル化した国会図書館の蔵書をインターネットで有料配信するサービスを開始するというものです。

 国会図書館長尾構想は、7月31日に同図書館の館議によって正式に実現を検討する計画となりました。これに先立ち、国会図書館、文芸家協会、書協及び森・濱田松本法律事務所の松田政行弁護士が協議を行っていたことは事実ですが、日経記事が報じた、9月に協議会設立、来春新団体設立という事実は存在しません。その意味では明らかな誤報であり、同弁護士及び国会図書館は日経に対して抗議をしたようです。

 記事に対しての国会図書館の見解を引用します。

「(1)当館は、デジタル化した資料及び将来電子的に納本される書籍等を、著作権者及び出版社の利益に配慮しつつ、国内のどこからでもアクセスできるような仕組みを模索しております。その仕組みの要点は、公共的な団体に当館のデジタル資料を無償で提供し、当該団体が公衆に有料で配信して、その料金のうちから権利者等に還元するというものです。

(2)今年に入り、日本文芸家協会(著作権者の団体)、日本書籍出版協会(出版社の団体)及び弁護士有志と、このような仕組みの実現の方法について話し合い、研究会を設けることを検討しています。当館は、その研究に対して積極的な協力を申し出ております。」

 以上のように、所蔵デジタル資料の館外提供についての考え方を述べた上で、日経記事が事実と相違する点として

「当館は、記事に掲載されている「協議会」の主体でも、またデジタルデータ配信の主体でもなく、民間等が設立する(公共目的の)団体にデジタルデータを提供する仕組みを検討している段階であること。また、記事に示されたスケジュールについても、決定しているものではないこと。」

 を指摘しています。

グーグルvs.ジャパン

 こうして見ていくと、記事が全くの誤報というわけではなく、大筋では正しいもののその具体化のプロセスについて、未決定であるものをあたかも決定しているかのうように書いたところが問題だったということです。