定年後のパラレルキャリア

 パラレルキャリアを始めるのに、遅すぎるということはありません。定年後もキャリア時間軸を延長し、パラレルキャリアを実践している元気なシニアの具体例として、別所邦彦氏についてご紹介しましょう。

 もともと別所氏は、大手製造業で営業を担当し、仕事一筋の人生を送られてきました。つまり、パラレルキャリアについては想像もできない生活であったわけです。

 つつがなく会社生活を終え、定年を迎えられた別所氏は、定年後の時間を有効活用するために、数ヵ月後に第二の人生としてハローワークでのカウンセリング業務と紹介業務に就き、キャリアカウンセラー、心理カウンセラーの資格を取得しました。その一方で、地域とのつながりのないままでは、近い将来、自身がひきこもりになってしまうのでは、という不安を感じてもいました。

かつしか夢プラス(若者の社会参加応援事業)の設立

 ハローワークの業務を行なうなかで、別所氏は若者のひきこもりと不登校に問題意識を持ち、この問題で地域に貢献したいと考えるようになりました。

 しかし、別所氏が住む地域(葛飾区)に豊富な人脈があるわけではありません。そこで思い切った方法を選択しました。葛飾区内の、自分と同じキャリアコンサルタント資格を持つ人全員に、若者のひきこもりと不登校に対する取り組み実施についての勧誘メールを発信したのです。

 うれしいことに4人の賛同者があり、任意団体の「かつしか夢プラス」を設立することができました。その後、別所氏は、葛飾区が住民提案型の協働事業提案制度を始めたことに気がつきました。活動を周知するために、別所氏は若者の社会参加応援をテーマに応募して採用になりました。

 当初は講演会&相談会でしたが、後に新たな提案が採用され、土日祝日開催の相談支援事業(若者の居場所)についての協働事業も始めることになりました。こうして「かつしか夢プラス」は行政との連携も実現し、「特定非営利活動法人みらくる」へと発展したのです。

 いまや別所氏は、平日は本業である千葉市での生活保護受給者の就労促進事業、週末は「みらくる」の活動を行ない、休日返上のような状態になっています。別所氏にとって「みらくる」の活動はライフワークであり、生涯にわたってパラレルキャリアの実践者であり続けることが予想されます。