夏目 では早速、換えます!

稲島 でもね、私は「サラサラのジュース」も否定しません。飲み物は「美味しいから」という理由で飲むことも大事なので、エビデンスにばかり縛られる必要はないと思います。

夏目 「エビデンス」……「証拠」って意味か。

稲島 はい、根拠と訳されることもあります。そして、縛られる必要はなくても、エビデンスを参考にすることには意味があります。たとえば、健康によい、というイメージがある「ビタミン」「ミネラル」「ポリフェノール」「酵素」などの聞こえの良い物質は、追加で摂取してもヒトに対して利益があることはまだ証明されていないものばかりです。有害とまで結果が出たものもあるくらいです。それらより、食物繊維など普通の食事の方がありがたいとわかります。

βカロテンが肺がんを増やす
「健康に良さそうな成分」だけを摂取する危険

夏目 なるほど。でも、ボクはいちいち論文など見ないなぁ。むしろ先生に、答えだけ教わればそれでいいや。

稲島 そうおっしゃると思いました。ではもう1例を示しましょう。下の表を見てください。一時期もてはやされたβカロテン(またはカロチン)と肺がんの発症率を調べた論文です。この図では4つの-■- と5番目の菱形が95%信頼区間です。

βカロテン摂取で肺がんが増える!<br />データで読み解く食品のウソホントフロリダ がんセンター研究所による、4つの臨床研究、 109,394人(介入群54,955人、対照群54,439 人)のメタ解析(Cancer. 2008 Jul 1;113(1):150-7)

 βカロテンは肺がんを減らすと期待されていました。しかし4つの臨床研究の結果をまとめると(上から5番目の菱形)95%信頼区間が1より高くなっています。ちなみに右側に行くほど肺がんの発症が多いことを示します。βカロテンを定期的に摂取していた喫煙者は、肺がんになる可能性が高まることを意味しています。

夏目 へぇ~!

稲島 食物の中の「健康に良さそうな成分」を抽出しても、有効だったと言えない場合が多いと思います。逆に、何らかの成分を抜いてしまっても、やはりメリットが減る可能性があるのではないでしょうか。食物繊維を抜いた野菜ジュースがこれにあたります。カラダに良いとか悪いとかいう物質は次から次に出てきますが、実際に自分のカラダで試してしまう前にデータを見る、またはデータを元に論じている文書を読む、ということをお勧めします。無料で手に入る資料が多いですし。