イトーヨーカ堂(東京都/亀井淳社長)が、新たなプライベートブランド(PB)「THE PRiCE(ザ・プライス)」を発売した。同社が昨年から取り組んできたディスカウントストア(DS)「ザ・プライス」向けに開発されたもので、ナショナルブランド(NB)に比べて3~5割程度安い。消費者の低価格志向が高まる中、新PBの導入で価格競争力強化を図る。(取材・文/大木戸 歩(チェーンストアエイジ)

今期中に350アイテム
50億円が目標

 イトーヨーカ堂が6月22日、首都圏で8店舗を展開するDS「ザ・プライス」で、同名のPBを発売した。セブン&アイ・ホールディングス(東京都/村田紀敏社長)傘下のGMS(総合スーパー)、SM(食品スーパー)各社が扱う既存のPB「セブンプレミアム」より1~2割安く、NB商品に比べると3~5割程度安い。

イトーヨーカ堂が<br />低価格帯PB発売
イトーヨーカ堂が6月22日に発売した新PB「THE PRiCE」シリーズ

 新PBは、6月22日に発売した食品16アイテム、住居関連商品40アイテムを皮切りに段階的に導入し、今期中に350アイテムまで拡大する。開発商品は、消耗頻度の高い生活必需品に絞り込む。イトーヨーカ堂は今期中にザ・プライスの店舗を20店舗まで増やす計画で、この20店舗で50億円を売り上げるのを目標とする。当面はザ・プライス店舗でのみ販売する方針だが、将来的にはグループSMのヨークベニマル(福島県/大髙善興社長)やヨークマート(東京都/川上達郎社長)への導入も視野に入る。

 これまでザ・プライスではNBに対して割安感を打ち出せるPBとしてセブンプレミアムを販売してきたが、今後、セブンプレミアムと新PBで重複するカテゴリーについては新PBに切り替えていく。現在ザ・プライスの加工食品の売上高に占めるセブンプレミアムの割合は10%程度で、新PBへの切り替え後も同程度の売上高構成比を想定している。ザ・プライスは店舗全体のアイテム数を通常のイトーヨーカドーよりも絞り込んでおり、現在のアイテム数は2300~2500アイテム。新PB導入後はNBをさらに2~3割削減する。具体的な粗利益率は非公表だが、新PBに切り替えても粗利益率で同水準を維持するめどは立っているという。

 新PBについては、食品に先行して衣料品でオリジナル商品の展開を始めており、980円のジーンズが好調に推移している。執行役員プライス事業部長の渡辺泰充氏は「1店舗当たり平均で1日に100本以上売れるヒット商品に育ってきた」と話す。6月22日からは新たにカラーパンツの展開も始めており、衣料品の売上回復に向けて商品展開を加速する。

製造工程のムダを見直し
売価に還元

 新PBは「安かろう、マズかろうではなく、品質が最優先。質を落とすのではなく、ムダを省くことで低価格を実現する」(プライス事業部 DS商品開発チーフマーチャンダイザー・藤田智明氏)のをコンセプトに掲げる。

 たとえば、セブンプレミアムよりも21円安い焼のり(10枚/177円)は、穴があいていたり、傷が付いていたりして、通常なら廃棄されていた商品も選別せずに商品化した。従来の工程で選別作業にかかっていたぶんのコストを削減し、原価を抑えることで低価格を実現している。さらに、パッケージデザインに使う色を赤、白、黒の3色に減らすことで印刷時にかかるインク代を抑えるほか、物流面でも段ボールひと箱当たりの入り数を増やすことで、段ボールの数を減らしてコスト削減につなげるなど、各工程でのコストの見直しに取り組んでいる。

セブンプレミアムとザ・プライスの価格比較

 今後の商品開発については、いちだんと踏み込んだ原材料の見直しや新たな調達先の開拓も課題となる。現在、新PBの食品の取引先メーカーは国内の40社ほどだが、今後は海外の調達先の開拓にも取り組んでいく。