いまだ少数派の女性管理職。横並びの会社の中では「突出」した存在だ。だからこそ、自分も周囲も「遠慮」する。女性管理職たちはどう孤独を乗り切ればいいのか。(AERA編集部・齋藤麻紀子)
息苦しい。もっと、のびのび仕事がしたい。
製薬会社でMRをしていた女性(35)は営業所長になった2年前、八方ふさがりな感覚に見舞われた。社内では、結婚や出産で営業の一線を退く女性が多い。営業の現場で、女性管理職のモデルになることを期待され、男性社員より10年も早く昇格した。
MR時代は、何度も「全社1位」の成績を残した名プレーヤーだった。ポリシーは「押すより引け」。取引先の医師たちの表情の変化すら見逃さず、必要な情報を提供した。一度取引を始めたら簡単には覆らないほど、盤石な関係を築き続けた。
だが所長になった途端、営業所の売り上げは一気に落ちた。MR時代の「引き」の姿勢が、所長の立場では生きなかった。
部下は全員男性。気を使って明確に指示することができない。卸業者など外部の人との交渉も必要だったが、遠慮してしまう。とうとうアポイントすら取れなくなり、商談には元上司に同行してもらうこともあった。
「このままでは、後輩の女性たちの道をつぶすことになる」
その気負いが逆にメンバーとの関係を悪化させた。
「所長はグチを漏らしてはいけない」「ネガティブな情報はストレートに伝えないほうがいい」など、自分で作った所長像に追い込まれ、とうとう営業所の成績は全国最下位になった。
「当時は、誰とも本音で話せなかった。とにかく孤独でした」